アディーレ法律事務所が懲戒処分!過払い金請求に見え隠れする業界の問題と歴史
はじめに
2017年10月11日、東京弁護士会は、弁護士法人アディーレ法律事務所に対して処分を言い渡しました。
アディーレといえば、過払い金返還訴訟でおなじみの弁護士法人では大手の事務所です。
以前から「過払い金返還請求の着手金無料!」などキャンペーンとして、期間限定を装い、実際には、数年間実施するといった過剰な広告や過払い金請求のCMが、問題視され、消費者庁から行政処分を受けていました。
今回の懲戒処分は、消費者庁の処分以降、弁護士会の懲戒委員会が、懲戒是非やその内容を検討した結果の判断です。
懲戒委員会による大手法律事務所へのこの決定をやはり過剰だったかと見る一方で、業務停止のニュースに「困った人を助けるはずの弁護士がなぜ?」と思われた方も多いでしょう。
人権救済につとめ、中立的な立場から紛争を解決するはずの弁護士への処分。
弁護士会によれば、法律事務所や弁護士が、懲戒処分となるのは、弁護士法や弁護士会の会則などに違反した時、弁護士会の秩序や信用を害する行為や職務の内外を問わず、品位を失うような非行を行った場合です。
では、アディーレ法律事務所は、どのような経緯から処分対象となったのか?
行き過ぎた広告を打つ法律事務所は、アディーレに限ったことだったのでしょうか?
時効を迎える「過払い金請求」をめぐって、今、法曹業界に何が起こり、今後、どのようになっていくのか?
今回は、アディーレ法律事務所の問題とその一件で、明るみに出た過払い金請求に見え隠れする業界の問題を探っていきます。
目次 |
なぜ、アディーレ法律事務所は懲戒処分となったのか?その理由とは?
お笑いコンビが起用され、お馴染みとなった弁護士法人アディーレ法律事務所のCMも、最近では、めっきり見かけなくなりました。
公式ホームページも、ドメインは残っているようですが、「今回の業務停止処分についてのお詫び」が掲載されているページ以外は、どのページも閲覧することはできないように消去されています。
広告に掲載していた過払い金返回収実績数は右肩上がり、CMからは、派手に事業を拡大しているかに見えたアディーレに何が起こったのでしょうか。
アディーレ法律事務所の懲戒処分とは?
東京弁護士会の発表によれば、同会は、弁護士法第56条に基づき、弁護士法人アディーレ法律事務所に対して、2カ月間の業務停止(2017年10月11日から同年12月10日まで)、そして、同法人元代表の弁護士石丸幸人に対して、業務停止3カ月の懲戒処分を言い渡しました。
これによって、アディーレは、全国86拠点、全ての業務を向こう2カ月間、停止しなければならなくなりました。
同弁護士事務所に懲戒処分が下されるに至った大元の理由は、債務整理・過払い金返還請求の着手金についての広告表示が、「不当景品類及び不当表示防止法」(以下、「景表法」と表記)の有利誤認表示に該当したことに始まります。
処分が下るまでの経緯と背景
遡ること2016年2月に同弁護士事務所は「債務整理・過払い金返還請求」をめぐる広告について、消費者庁から上記「景表法」違反で広告禁止の措置命令を受けていました。
今回、同法律事務所が懲戒処分を受けたのは、この消費者庁の措置によって、弁護士会が調査に乗り出し、違反確認されたこと。
また、日本弁護士連合会による弁護士の業務広告に関わる規程に抵触していたこと。
さらに、それらの行為が、弁護士、並びに弁護士法人として品位を欠くものであったと判断されたからです。
では、弁護士会による今回の処分までの経緯を簡単にまとめていきます。
まず、消費者庁が広告禁止の申し渡しをしたのは、先にあげた通り2016年2月のことです。
そして、ここで問題とされたのは、2010年10月から以下の期間(約5年間)に利用されていたそれぞれの広告についてです。
- 2010年10月6日から2013年7月31日
- 2013年8月1日から2014年11月3日
- 2014年11月4日から2015年8月12日
問題となった広告には、実際の条件よりも有利な取り引きができるような顧客を誘導するような表現や消費者の誤解を招く記述が利用されていました。
その広告表現は、受け手となる消費者の正確な判断と依頼先の選択を阻害するような内容で、長期間に渡って、何度も繰り返し続けて掲載されてきたことも処分の対象理由として大きな位置を占めた点です。
その後、消費者庁の処分に遅れること数か月、複数の懲戒請求者が、懲戒を請求してきたことによって、今度は、やっと弁護士会が動き出します。
実際のところ、この問題について同事務所は、全国各地の弁護士会に懲戒請求を起こされていました。
東京弁護士会などの複数の弁護士会の綱紀委員会は、アディーレ法律事務所と代表の石丸幸人弁護士、および同事務所の5名の弁護士(1名はすでに退職)に対して、「宣伝手法の違法性を指摘・是正させる弁護士としての職務を怠った」などとして、懲戒審査に付す決定をしたのです。
上記決定が下されたのは、2016年12月から2017年2月にかけてのことです。
そして、2017年10月11日、懲戒審査では、処分を見送りにするという意見の弁護士会もあったものの、最終的に東京弁護士会は、これまでのアディーレの行為を組織的な非行として重く受け止め、厳正な態度で今回の処分に至ったのです。
問題となった広告の具体的内容とは?
問題となっている期間に掲載されていた表現を見てみると、例えば「過払い金消滅防止キャンペーン」「笑顔満点キャンペーン」「法律相談実績25万人 ありがとう10周年 返金保証キャンペーン」など、どの期間においても、「キャンペーン」という言葉を利用しています。
この一語には、「期間限定」を全面にアピールする効果があります。
実際に「期間限定」という言葉を利用していた時期もありますが、その言葉を利用しなくても消費者の行動を煽る十分な効果があったことは、契約者数の多さが証明してくれるでしょう。
また、期間限定の言葉やそれらを匂わせる表現に続けて、「通常債権者1社につき4万3200円(税込)の着手金を無料。完済していない業者(残債のある業者)に対する過払い金返還請求の場合は着手金が1社に付き1万円(税込1万500円)」「現在返済中の方は、相談前の過払い金診断が無料!」「ご満足いただけなかった場合、着手金を全額返金!(90日以内)」など、広告にはお得な情報が並んでいました。
これらの表現には、依頼を急がなければこのお得を逃してしまうというメッセージが込められていることは、第三者から見れば明らかです。
しかし、「過払い金が戻ってくるのかとりあえず知りたい!」という消費者にとっては、着手金は安いに越したことはなく、その上、「期間限定」というフレーズで早急な判断を煽られれば、正しい選択などできなくなります。
また、それらの表現には、他の事務所と比較してもお得だと消費者の気持ちを駆り立てるものでもありました。
これによって、アディーレは、期間限定という表現だけでなく、「今だけの〇〇」「1カ月間限定」と消費者の正しい判断を阻害するような表現によって、利用者を増やしていると非行を問われてきたのです。
さらに、「キャンペーン」「今だけ」と謳いながら実際には同じキャンペーンを、数ヶ月から数年に渡って続けてきたことは、弁護士にあるまじき行為と判断されたのです。
アディーレ法律事務所の拡大と実績
アディーレを短期間に顧客数の多い大手事務所に押し上げたのは、弁護士一人一人の能力の高さというより、効果的で目立つCM、利益につながる広告の手法など経営手腕があったからと言えます。
アディーレの創立は、2004年、石丸氏が法人化したのは、翌年2005年と大手の法律事務所と比較しても、設立から十数年の若い法律事務所です。
しかし、次のデータを見てみると、アディーレがいかに短期間のうちに、一気に上位層に上り詰めたのかが分かります。
以下は、2017年1月時点の法律事務所の規模を所属弁護士数で表したものです。
10位までをランキングで掲載しています。
- 西村あさひ法律事務所:528名(外国人弁護士7名)
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所:417名(外国人弁護士8名)
- TMI総合法律事務所:372名(外国人弁護士16名)
- 長島・大野・常松法律事務所:380名(外国人弁護士6名)
- 森・濱田松本法律事務所:374名(外国人弁護士4名)
- 弁護士法人アディーレ法律事務所:190名(外国人弁護士0名)
- 弁護士法人ベリーベスト法律事務所:140名(外国人弁護士1名)
- 弁護士法人大江橋法律事務所:133名(外国人弁護士7名)
- シティユーワ法律事務所:139名(外国人弁護士0名)
- ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業:114名(外国人弁護士19名)
2016年3月時点での全国の法人法律事務所数は、929法人で、上記はトップ10ですので、アディーレがいかに高みに立っていたかがお分かりいただけるでしょう。
また、アディーレより上に位置する弁護士事務所は、主に大手企業などを顧客とし、グローバルに事業展開している大規模なところばかりです。
そのような中で、CMを利用した宣伝を行うアディーレは、ランキング上位に位置する硬質な印象を受ける事務所とは、一線を画し、多くの人々が考える「弁護士事務所」像からは、遠く、異色に映ります。
ただ、債務整理や交通事故被害などを中心に扱ってきた同事務所の名前の由来を調べてみると、旗揚げした当時は利益ばかりでなく、「adire」の意味の通り、身近で顧客一人一人に寄り添った弁護士事務所にしようと思ったのではと感じられます。
しかし、推測でしかありませんが、アディーレ創設から数年後に、グレーゾーンが撤廃され、同事務所は、いい時期に時代の波に乗り、大金を手に入れる味を占めてしまったがゆえに、初心を見失ってしまったのかもしれません。
たった十数年で、日本の弁護士法人最大手5社に追いつくだけの規模に発展してきたのには、弁護士としての相当な能力と努力、もしくは、900以上もの法人をごぼう抜きするだけの経営手腕があったに違いありません。
アディーレは、2004年の開業から2017年の4月までに35万件以上、総額で2050億円以上の過払い金を回収したとしています。
日本貸金業協会によれば、貸金業者への過払い金返還請求額は、毎年数千億円(利息返還に伴う元本毀損額を含まない)で、グレーゾーン金利が禁止された翌年2007年度の利息返還金は、4724億円、ピーク時の2009年度は6589億円でした。
その後、2010年度には、5千億円代、2012年には3千億円代、2014年には2千億円代と徐々に減少してきました。
これらの請求額と、アディーレのそれを比べてみればわかる通り、全国に法人弁護事務所のみで900法人以上、それに、過払い金の回収を行う司法書士事務所のような法人を加えて比較すると、アディーレの回収額の高さが分かるでしょう。
参考までに、営業規模ではアディーレの下につけている7位のベリーベスト法律事務所のデータを見てみると、2017年10月までの回収実績が、640億円を超えたところです。
上記2つの事務所の弁護士数は、ほぼ変わりがないにもかかわらず、千数百億の差があるのですから、その分は、超過労働で補っているのか?より多くの案件をこなすためのシステム構築が万全になされているのか?一件当たりの回収額が、ベリーベスト法律事務所に比べて多いのか?数字からだけでは、そういった点は読み込むことはできませんが、上手に収益を上げてきたのは間違いないようです。
さらに、2017年1月時点でアディーレが広告に掲げていたひと月当たりの回収件数は、4879件で金額が33億円強でした。
この収益を報酬率20%として計算しても、ひと月に法人に入る収入の多さが分かります。
一方で、アディーレと言えば、2017年3月27日に破産申請を行った旅行会社「てるみくらぶ」から内定取り消しを受けた学生の支援をと声を挙げたことでも有名です。
以前には、弁護士志望者400名に事務所スペースを提供するなど、お金がなく困っている若者支援に力を入れていることを度量の深い経営者がいるものだと思った方は多いはずです。
それが、回転ずし事業への進出あたりからでしょうか、やはり、弁護士ではなく実業家が法律事務所を経営しているのだと、やっと気づかされたという人もいるでしょう。
アディーレのように「過払い金返還請求」をきっかけに急成長を遂げてきた弁護士事務所では、弁護士に会うのは相談はじめの5分程度で、後は、事務的な手続きを事務職員としていくというところも多いと同業者の中では囁かれていたようです。
効率を上げるための完全マニュアルで、ベルトコンベアーにのせられても、割り切って実業家弁護士に頼るか、それともやはり、従来型の弁護士に頼るか?
利用者が迷うのは、大手かどうかといった外からの見た目は知ることができても、実際の弁護士手腕や報酬金に見合った働きをしてくれるのか?さらに、過払い金は上手な交渉で取り残しなく全て回収することができるのか?といったことをなかなか知ることができないからです。
何を信用して、依頼先を決定するか難しいところではありますが、考え方によってアディーレは、「面倒なコミュニケーションは、できるだけ避けたい」「煩わしいのはご免なのでスピーディーに問題を解決したい」など、人々のニーズを上手く利用した、ある意味で時代にあった法律事務所なのかもしれません。
当初、アディーレが目指した「adire」という意味合いとは若干違っているように思えますが、これまでの近寄り難く重苦しい雰囲気を一掃するような、新しいタイプの事務所であることには違いないでしょう。
アディーレ法律事務所のコメント
処分を言い渡されたあとのコメントを見ると、法律事務所としてのアディーレの性質がさらに見えてきます。
東京弁護士会によると、アディーレは、懲戒処分の理由となった事実については認めているが、「有利誤認は軽微で、景表法違反の認識はなかった」とコメントしています。
また、消費者庁からの処分については「消費者庁の指摘を真摯に受け止め再発防止策を徹底する」との摯実な様子を見せるものの、「毎月継続の有無を判断しており不当表示だとの認識はなかった。」としています。
5年もの間、自分たちに有利になる広告を繰り返し掲載し続けていたにもかかわらず、それを「軽微」だったとし、一方では、「不当表示だとの認識はなかった」と弁明。
有利誤認が軽微だと言っておきながら、不当表示との認識はなかったという見解のつじつまが、一体どこで合致すると言うのでしょう。
また、石丸氏は「特別な法律がないかぎり、個人が法人について責任を負わない」としています。
これは、無限責任と有限責任の違いを言っているのだと思いますが、一般にはこの違いが分からず「社長が責任を取らないで誰が取るんだ?」と思う方も多いはずです。
例えば、個人事業主の場合、取締役が、無限責任を負うため、会社が債権を支払いきれない場合には、会社の連帯保証人として、社長が、たとえ自分の全ての財産を売り払っても弁済しなければなりません。
一方で、法人の場合、原則として個人である代表者は、会社の負債について法的責任を負うことはないのです。
ですから、「個人が法人について責任を負わない」というのは、発言としては間違ってはいません。
しかし、それを公にいうことによって「責任を負わない」という言葉だけが独り歩きしてしまうことは目に見えていたはずです。
仮にも自分が苦労して産み出した事務所なのですから、処分後の事務所のイメージや影響等も考えるべきだったのではないでしょうか。
この点ばかりではなく、これまでもアディーレ元代表の石丸氏には、損をしていると思われる点がいくつもありました。
例えば、東京弁護士会会長選への出馬や弁護士会の既得権益批判、さらに、メディアでの活動も顕著で、情報番組やバラエティまで、幅広く活躍していました。
これらばかりでなく、先に挙げた若者支援などについても、同様に言えることですが、石丸氏が、行ってきた活動は、一般的に見れば、「良いこと」で、「若いのによくやっている」と思われるべき行動も多々あったはずです。
多くの人にとって身近で、居住地域等に関係なく、全国どこでも弁護士が利用できるという環境をつくるという志も立派なものです。
ただ、誤解を恐れずにあえて言えば、「若い」上に「目立ちすぎた」のではないでしょうか。
「弁護士経験10年程度で東京弁護士会会長選に出馬?」「メディアへの露出度高い?」「派手に儲けている?」そう言った見方をする人も少なくなかったはずです。
そして、これまでの「弁護士像」には考えられないような行動、例えば、回転ずし屋を経営するなども営利主義とみられても仕方のないことです。
また、そもそも、広告に関する違反が注視されていることに気づいていながら、放送続けたのには、違反というリスクを背負ってでもCMを続行させるだけの莫大な利益があったからなのではないでしょうか?
さらに、石丸氏一人の判断であったのかは内部のものでしか分かりませんが、弁護士会の懲戒審査を受けている期間にも事務所のCMを流していたことについても賛否が分かれるところでしょう。
人が人の行いを判断するのは難しいということを前提としても、曲りなりにも、平等や人権を扱う弁護士という職業についている方々です。
そういった人が集まって、「やっかみ」による足の引っ張り合いなどをしているとは、考えたくもありませんが、今回の懲戒処分について周囲では、当然の結果とする意見と厳しすぎたのではないかという意見に分かれています。
アディーレの処分は、重いか軽いか?懲戒の種類「戒告」「業務停止」「退会命令」「除名」とは?
あまり知られていないようですが、国から独立した行政権限を持つ法曹界ひいては弁護士が、消費者庁のような行政庁から処分を受けるのは、おそらく戦後はじめてのことです。
懲戒請求があったことによって、弁護士会も重い腰を挙げたようにも見えますが、実際のところはどうなのでしょう。
消費者庁側は、処分に当たって、期間限定と言いながら、数年間も同じキャンペーンをして消費者を騙した極めて悪質な行為をそちらの法律事務所はしていましたねと言っているわけです。
ただ、ここで疑問として浮かび上がるのは、では、問題となる広告が何年にも渡って掲載されていたことを法曹界は黙認してきたのか?ということです。
国から独立した権限を持つということは、悪は自分たちで制裁し、自戒しなければならないという立場にあるはずです。
その立場にあるはずの弁護士会からの懲戒処分が消費者庁の処分からさらに遅れること1年以上という点に問題はなかったのでしょうか?
他の行政庁から処分を受ける前に、すべきことがあったのではないか?という法曹業界全体の監督責任への是非を問う議論は次の機会に預けるとして、ここでは、弁護士会がアディーレに下した処分がどれだけ厳しいものであったのかを確認していきます。
今回の処分は、弁護士法第56条に抵触したと同弁護士会に判断されたことによって決定されたものです。
同法の中でも第8章の「懲戒」に位置し、処分の中で最も重いものです。
さらに、この懲戒には、「戒告」「業務停止」「退会命令」「除名」の4種類があります。
まず、戒告は、その根拠となる行為への反省を求め、弁護士を戒める処分で、4種類の中では最も軽い処分です。
今回のアディーレの処分についても、この「戒告」が言い渡されるだろうと予測していた同業者は多かったようです。
「業務停止」の処分の期間は、2年以内で、決定を言い渡された期間は弁護士業務の一切の活動が禁止されます。
「退会命令」は、現在所属している弁護士会を退会しなければならないという処分です。
最後の「除名」は、処分として最も厳しいもので、弁護士としての身分を失い、3年間は弁護士資格も失います。
日本弁護士連合会資料による懲戒処分率を見てみると「戒告」「業務停止」「退会命令」「除名」の順に処分件数の割合が低くなっていきます。
「業務停止」2カ月と1カ月の違いとは?
今回のアディーレの場合、業務停止の処分ということになっていますが、処罰対象となった行為に対しての「業務停止2カ月」は、果たして妥当な処罰であったのでしょうか。
まず、業務停止措置であっても、1カ月と2カ月とでは、処分に大変な差があります。
業務停止期間が1カ月以内の場合、仮に依頼者が委任契約の解除を求めない場合には、辞任する必要がなく、顧問弁護士としての仕事も、依頼者の希望が無い限り解約する必要はありません。
しかし、業務停止が2カ月以上の場合、上記の通り、依頼者と交わした契約は、すべて解除しなければならず、顧問契約も同様に辞任手続きをとらなければならないのです。
上記のように、被懲戒弁護士についてもそうですが、法人は、2カ月間も休業をしてしまえば、それまで抱えていた案件は、手放さなければならず、2カ月後には、ゼロからのスタートとなることは、目に見えています。
このようにひと月には、大変な重みがあり、少しの処分の違いで、何とか頑張ってやっていけるか、あるいは、経営破綻に追い込まれるかという将来の展望が大きく分かれるのです。
事務所所属若手弁護士と依頼人への影響
また、今回の問題では、あまり報道されてはいませんが、アディーレ弁護士事務所の弁護士は、他の事務所と比べて若手が多く在籍していました。
弁護士歴による内訳を見ると、経験年数10年以上は石丸氏を含め5人。
2012年末以降に弁護士登録をした経験年数5年未満の若手は、全体の7割以上を占める程でした。
中には、厳しい規律や上下関係、ベテラン弁護士の下で修行するといったイメージが付きまとう弁護士業界において、アディーレの「仲間」を求めているという代表の言葉に惹かれて、就職を決めたゆとり世代の弁護士も数多くいたでしょう。
新しい世代にとって、理想的な雰囲気の職場として映ったのであろうアディーレは、結果的に、これから長い弁護士人生を送ろうとしている若手弁護士に業務停止となった事務所に所属していたという経歴を付けました。
その上、ベテラン弁護士について、将来さまざまな事件を幅広く担当できるよう仕事を教えてもらうという弁護士業界の伝統の中で、過払い金請求案件数が多かったアディーレで、若手弁護士は幅広い事件を勉強できたのかという疑問が残ります。
過払い金バブル崩壊後は、即戦力にならない弁護士の就職活動は上手くいくのでしょうか?
日本全体の法曹や治安維持という大きな枠で見るならば、過払い金バブル時代に、他の事件を見ずに育てられた若手弁護士の救済も法曹界の今後の課題でしょう。
一方、契約者側の立場とすれば、手続きによってそれまでの担当弁護士と個人契約を結ぶことはできるとはいえ、一旦、契約をストップさせる契約をし、もう一度契約を結び直す、あるいは、他の事務所に移るなど、特に過払い金の時効が差し迫っている顧客にとっては、迷惑以上の何ものでもありません。
このように、今回の処分の影響は、処分を受けた事務所と弁護士だけではなく、事務所所属のすべての弁護士、依頼人と広く波及するのです。
「行為と処分の均衡を欠く」アディーレの言い分とは?
さらに、アディーレの処分が、重いか軽いか?を考えるために処分の原因となる広告に、もう一度フォーカスして見てみます。
すると、弁護士という立場にあるものが倫理性を欠く行動を起こし、異例の行政処分を受けたことは、十分に反省すべきことに間違いないものの、着手金については、一切問題はないということが分かります。
これについては、アディーレ法律事務所広報部も発表で触れています。
「処分は厳粛に受け止める。消費者庁からの措置命令に関しては事実に争いはなく、責任を軽視するものではない。もっとも、景品表示法違反の事実があったことをもって法律事務所の存亡に関わる業務停止処分を受けることは、行為と処分の均衡を欠く。依頼者に多大なご迷惑とご心配をお掛けすることに関しては、心よりおわび申し上げる」としています。
アディーレのこれまでの行いと言い分とを照らし合わせて「行為と処分の均衡を欠く」という主張に「お気の毒に」あるいは「それは考え直してあげるべきだ!」と共感する人は、どれほどいるでしょうか。
また、アディーレは、「明白な事実誤認があり、処分は重すぎる」として、日本弁護士連合会に処分取り消しを求めて審査請求を申し立てたと最近報道されました。
この申立書で、今回、問題の中心となっている広告について「さしたる顧客誘引力があるとはいえず、依頼者が委任先を選択する意思をゆがめられることは想定しづらい」と主張。
「せいぜい戒告にとどめるべきで、業務停止2カ月の処分は著しく相当性を欠き、違法だ」として処分取消しを求めています。
そう言われてみれば、確かに厳しいかもしれないと思う方もいるかもしれません。
アディーレは、これまで積み上げたものをたった2カ月で一気に失い、業務停止の期間が開けたとしても、これまで通りの収益が見込める補償などどこにもないのです。
それどころか、莫大な金額を投入していたとみられる広告費についても、返済金は準備できるのか、契約者とのやり取りやその他の対応など、決して利益の発生しない行動に膨大な時間と労力をかけることを考えると、今回の処罰は、大変な損失であることが分かるでしょう。
司法を司るギルシャ神話のユースティティア、その正義の女神像や天秤を弁護士事務所のロゴとして利用するところは少なくありません。
女神の姿は「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」という意味を持ち、目隠しをしているのは、貧富の差や権力の有無に関係なく法が等しく適用されることを表しているからと言われています。
「アディーレが抱える損失」と「長期間に及ぶ過失」その天秤の重さを神話の女神なら、どのように量ったのか?そして、「正義」は一体どこにあるのか?人が人を裁く難しさが見えた一件です。
不当景品類及び不当表示防止法とは?弁護士収入と過払い金請求の深い関係
「景表法」の違反決定までの流れ
消費者庁から言い渡されたアディーレの「景表法」違反内容を簡単にお浚いすると、「キャンペーン時限定の無料サービスと謳いながら、恒常的に実施していた」というものです。
では、その「景表法」の処罰はどのように決定され、どのような罰があるのでしょう?
「景表法」違反決定から、処罰までには、次のような流れがあります。
1.まず、消費者庁の調査の結果から、景表法違反か否かについて言い渡しがあります。
この時点で違反の事実がない場合であっても、今後違反となる恐れがある場合は「指導」措置が採られます。
ただし、ここで違反と言い渡された場合であっても、例えば「即刻、罰金を支払ってください」などの具体的な指示があるわけではありません。
2.違反内容が言い渡された後、「弁明の機会」を得ることができます。
弁明の機会とは、簡単に言えば、違反内容について言い訳をする機会のことです。
しかし、言い訳だからと甘く見てはいけません。
このチャンスにしっかりとした言い訳をし、相手を納得させることができれば、それ以降の処分発動が無くなるかもしれないからです。
3.弁明の機会を成功させることができなかった場合、「措置命令」を受けることになり、違法内容部分の消去等(広告表示等の修正)が言い渡されます。
この措置命令に従い、反省し、直ちに改善すれば、これ以降の処分はありませんが、
これに従わない場合には、以下の罰が科されることになります。
4.措置命令に従わないものは「刑事罰」に発展し、最大2年間の懲役、あるいは、300万円の罰金が科されます。
ですから、今回のアディーレの罰則は、景表法上は、刑事罰にまでは発展せず、「措置命令」で留まったことになっています。
しかし、これは、あくまで消費者庁による「景表法」上にすぎず、その後、同事務所は、弁護士業界の「弁護士法」によって、罰せられることになるのです。
「優良誤認」と「有利誤認」
景表法による規制対象は、「優良誤認」と「有利誤認」大きく2つに分けられています。
まず、「優良誤認」は、事業者が提供する商品やサービスの質や規格、その他の内容を消費者に向けて、
- 実際の品質やサービスよりも優れていると偽る
- ライバル企業が提供している商品やサービスと比較しても優れているわけではないのに、自分の方が優れていると偽って、不当に顧客の自主的判断を阻害するような表示を掲げている場合を指します。
ここで注意しなければならないことは、これらを故意に行った場合はもちろんではありますが、誤って、あるいは、他社のサービスや商品を知らずに宣伝したという場合でも、罰則対象となりますので、事業者の方は十分な配慮が必要となります。
一方の「有利誤認」ですが、こちらは、事業者が扱う商品やサービス取り引きの中で、価格その他の条件が
- 本来提供しているものより有利だと消費者に誤認されるようなもの
- ライバル企業の商品・サービスよりも有利であると消費者に誤認されるように仕向け、顧客の選択を阻害するような不当な表示で集客を行っていた様子があるとなると景表法違反に問われることになります。
今回、アディーレは、「キャンぺーン」中に依頼しなくては!と思わせる表示によって消費者の正常な判断を阻害したとして後者の「有利誤認」と判断され、措置命令を出されています。
「景表法」違反でアディーレが騒がれたのはなぜ?
ただ、少し思い浮かべただけでも「期間限定!」「今だけお得!」「キャンペーンサービス!」「閉店セール」といった言葉は、生活の中に溢れています。
テレビショッピングはもちろん、ネットや新聞広告、スーパーや量販店など身近な環境の中で、無意識に宣伝文句に惹き付けられていたという経験は誰にもあるはずです。
当然、それらの売り込み文句を利用した店舗全てが罰せられるというわけではありません。
先にも挙げたように、処罰対象となるか否かは、それが、本当に定めた期間で終了しているか?という点にあるからです。
では、宣伝している期間を超えて、恒常的に宣伝をして集客を行っていたという例は、アディーレに限ったものなのでしょうか?
実際に、消費者庁のページを見てみると、「景表法」の調査対象及び処罰対象となっているのはアディーレ法律事務所に限ったことではないということが分かります。
消費者庁の統計によれば、措置命令の件数は、2014年30件、2015年13件、2016年27件となっています。
ただし、措置命令だけでなく、課徴金納付命令、指導、その他、都道府県や公正取引協議会等に移送したものなど調査処置件数の全てを含むと、例えば2016年では、前年度からの繰り越し件数を含め543件と、その数の多さに驚きます。
対象となっている商品・サービスを見てみると、飲料水や食品といった日用品ばかりでなく、サプリメント、自動車、インターネットサイトやセキュリーティーソフト、教育サービス、保険やクレジットカードといった金融関連まで、さまざまなサービスが消費者がお得!と誤認するような宣伝広告を掲載しているとして調査対象となっているのです。
このように、消費者庁の「景表法」の調査対象として挙げられたのはアディーレだけではないのです。
ただし、今回、アディーレが前代未聞のケースとして注目されたのは、弁護士事務所が、消費者庁から処罰を受けたこと、そして、ルールを守る模範的立場にあるべきものが、「景表法」に違反したからです。
司法権の独立が許されている機関での問題に関して行政機関である消費者庁が処罰に乗り出したのは、あまりに行いが酷かった、あるいは弁護士業界が動き出さなかったからなど、どのような経緯でなのか、その理由については、明らかにされていません。
ただ、同業者では、はじめてということですのでその点では、やはり、弁護士業界に何らかの異変があったと推測できます。
近年の弁護士業界における目に見える変化と言えば、やはり、グレーゾーン金利撤廃に伴う案件の増加と過払い金請求案件を得意とする弁護士事務所が登場してきたこと、さらに、政府による法曹人口の拡大を目指した政策によるものでしょう。
法曹業界の闇!?誰が、アディーレの懲戒請求を行ったのか?
過払い金請求依頼は、この先、先細りが確実である上に、一旦拡大した法曹人口によって、顧客は、取り合いになっていました。
過払い金請求の時効が迫る中で過剰なまでのCMを打っていた弁護士事務所は、アディーレばかりだったわけではなかったはずです。
弁護士溢れる業界の中で、おいしい案件として知られていた過払い金請求案件の顧客獲得競争から逸脱した弁護士は、どうやって生計を立てるのでしょう。
ガッツリ稼ぐことのできる案件を豪快にさらい、桁違いの売り上げをたたき出していたアディーレを周囲はどのように見ていたのでしょうか?
そのような中で、果たして「誰が、アディーレの懲戒請求を行ったのか?」というのは、当然の疑問です。
「正義」という天秤を持つ弁護士とその業界に、羨ましさに人の足を引っ張ると言った行いはないと考えたいところですが。
それらのことを踏まえ、以下では、懲戒請求や現在の弁護士業界事情について見ていきます。
アディーレの懲戒請求を誰がしたのかということについては、いくつかのメディアでも取り上げられています。
そして、取材済みなのか憶測なのかわかりませんが、一部の記事には、同じように過払い金請求バブルに乗って登場したライバル事務所、弁護士の素行等についてチェックしているという団体、その他、アディーレの繁盛ぶりを面白く思っていない同業者など、懲戒請求者として特定して掲載しているものもあるようです。
しかし、日弁連では、懲戒請求者の一般への開示はしていません。
そもそも、懲戒請求者を公開すれば、リスクを負って懲戒請求をしようとは誰も思わないでしょうから、その制度自体が無駄になってしまいます。
しかも、その行い自体を問題視して懲戒請求するのではなく、自分の利害や損得によって懲戒請求をする同業者がいるのであれば、その行為自体公平性を欠く、弁護士としてあるまじき行いです。
そして、そのような引きずり合いがあるとすれば、国民が安心して弁護を利用できるよう業界全体の体質の見直しが必要になるでしょう。
誰でも弁護士の懲戒請求ができる?
アディーレの一件で、弁護士の懲戒請求について初めて知ったという方も多いようです。
また、懲戒請求をしたのは、弁護士会や日弁連ではなかったの?と思われる方もいたでしょう。
そもそも、弁護士の懲戒請求は、事件の依頼者、あるいは相手方など関係者でなければしてはならないというものではありません。
刑務所の中から服役囚が懲戒請求をした例もあるほど、驚かれるかもしれませんが言い換えれば、誰でもできる手続きになっているのです。
懲戒請求の方法は、懲戒を求める弁護士が所属する弁護士会に請求手続きを行い、綱紀委員会で非行の審議を求めるというものです。
ただし、各弁護士会によって提出する懲戒請求書の部数や方法に若干違いがありますので、懲戒請求を行う場合は、手間を増やさないよう、事前にきちんと調べておくと良いでしょう。
懲戒請求書には、請求者の氏名、住所、電話番号、年齢と対象弁護士の氏名、事務所名と事務所住所、所属弁護会を書き込んだ上で、請求の趣旨と具体的な請求内容を書きます。
このように定められた用紙に内容を記し提出するだけで懲戒請求ができてしまうのは、利用する側にとっては、心強くもあり、一方、弁護士にとっては気が抜けない制度でもあります。
法曹業界の今、弁護士が溢れているって本当?
懲戒請求新受件数の推移を見てみると、2000年以前の数字は(1997年488件、1998年715件、1999年719件と)1000件以下であったのに対して、2000年以降はほぼ毎年1000件を超え、2010年を超え、2011年には、1885件、2012年3898件、2013年3347件と非常に数が多くなっています。
2012年、2013年の懲戒請求件数が3000件を超えているのには、1人で100件以上の懲戒請求をした事案が数件あったためですが、それでも1990年代と比較するとその数の大きさが分かるでしょう。
また、日本弁護士連合会が懲戒処分の統計を取り始めたのは、60年以上前、1950年のことです。
その長い歴史の中で、近年その数に大きな変化が見られるようになりました。
2014年の弁護士の懲戒処分件数は、101件で、集計を始めて以来、初めての100件越えとなりました。
それだけ、弁護士の非行が目立つようになったのかと思われそうですが、同会の弁護士数に対する懲戒処分数の割合を見てみると、1998年から2014年までの推移は、およそ0.2%0.35%程度と大きな変化がありません。
これによれば、非行が横行するようになったわけではなく、懲戒処分が増えた割合だけ弁護士の数も増えたということが分かります。
なぜ、弁護士人口は拡大したのか?
では、近年、弁護士数が増えたのはどうしてなのでしょうか?
法的需要が、それほどまでに高まったということなのでしょうか?
実際のところ、弁護士人口の拡大は、政府による政策が大きく関わっています。
2002年、日本政府は、司法制度の大改革と司法が国民にとって身近なものとなるよう司法機能の抜本的な強化をはかるため、裁判官・検察官・弁護士といった法曹人口の拡大を目指し、司法試験の年間合格者数を目標3000人とする司法制度改革の閣議決定をしました。
そして、法曹人口大幅増加に対応するため新しい法曹養成制度が2004年4月の法科大学院開校によってスタートしました。
これによって、法科大学院の数も2004年度に68校、2005年度には6校開設するなど、法曹養成の体制も拡大していきました。
しかし、2010年まで、74校あった法科大学院は、年々、定員割れが問題となり、2017年度入試では、43校と激減。
志願者数も2004年の4万810人から、2017年にはその数7450人と大幅に低下しました。
この背景には、数千人規模の増員を受け入れるだけの就職先が無かったことなどが挙げられます。
弁護士の供給過多で、就職難が発生し、司法試験に合格できたものの働く先が見つからないという若手弁護士が溢れたのです。
さらに、受け皿としての法律事務所数が圧倒的に少ないことから、現任訓練ができず、教育訓練不足による質の低下も懸念されました。
ただ、このように、法科大学院や志願者が激減し、法曹人としての質の低下が叫ばれる一方で、弁護士数は、司法制度改革が目指した通り、増加していったのです。
1949年、旧司法試験スタート時の合格者数は265人でした。
その後、1964年に508人となった後、1990年まで数十年にわたり、合格者数は500人前後とほぼ同数を位置していました。
それが、2000年前半から徐々に増え、2007年には2000人を上回るようになったのです。
司法試験合格者が増えたことによって当然、弁護士数も増えていきました。
1950年に5827人だった人数は、1975年に1万人を突破した後、法科大学院開設前年の2003年まで1万人台をキープしていました。
それが、新しい法曹養成制度がスタートした2004年を境に2万人台となり、それから数年後の2010年には3万人台を突破、現段階で3万人代後半というところまで来ています。
弁護士収入の推移と法曹界の実情
では、少子高齢社会の日本の現状で国民人口数は、減少することが予測されているにもかかわらず、弁護士人口が増えているのは、どのような理由からなのでしょうか?
実際のところ、刑事事件も民事事件も一定のラインを推移しているため、法的需要が増えたというようなことは決してありません。
日弁連が発表している民事訴訟件数の推移を並べてみると、2005年13万2727件、過払い金請求のピークにあたる2009年、2010年には、23万5508件、22万2594件とそれぞれ20万件以上の訴訟数があるものの、2015年14万3816件と2010年以降は10万件台を推移しているのです。
それと比較しても、年々、弁護士人口は増え続けているわけですから、就職できない若手弁護士に加えて、仕事が少なくなっていく弁護士事務所もあるはずです。
法務省の法曹人口シミュレーションによれば、このまま、新採用の法曹人口を毎年1000人ずつ増やしたとして、10年後には、4万5566人、30年後には5万1483人に増えると予測されています。
その上、国民人口の推移予測は減少傾向にあるわけですので、法曹1人当たりの人口も現段階で3111人、10年後は2000人台、30年後は、1000人台と大幅に減る計算となっているのです。
そのような状態で、弁護士業界に身を置く人々は、30年後、どのようにして生活していくというのでしょうか?
総人口のうち、弁護士一人に1000人割り当てられているとしても、その全てが依頼人になるとは限りません。
現在の日本の弁護士依頼状況から判断してもそのうち、利用者は3分の1以下になるのは間違いありません。
例えば、アディーレの業務停止日、その時点で、依頼者数は、数万人規模10万人にも及ぶのではと言われていたほどです。
その状況と比較するのは無謀すぎますが、弁護士一人に割り当てられる依頼者数が、そのように低い状況で、法律事務所は成り立つのでしょうか。
さらに、長年、年収の高い職業ランキングでは、常に上位に位置してきた弁護士、その弁護士の年収に異変がおきています。
近年、ここ20年ほどのデータを見てみると民事事件件数がピークを迎える2009年、その翌年2010年の新人弁護士の年収は736万円であったのに対して、5年後の2015年には、543万円と210万円以上減っています。
また、この状況は新人弁護士ばかりでなく、弁護士業界全体の平均年収が激減しているのです。
例えば、弁護士登録5年目、登録9年目の方の平均年収を2010年と2015年で比較してみると、以下のようになります。
- 登録5年目の弁護士:2010年 1700万円⇒2015年1135万円
- 登録9年目の弁護士:2010年 2780万円⇒2015年1605万円
弁護士登録5年目ではたった5年間のうちに、500万円以上の差となり、9年目ではなんと1000万円以上もの差がついてしまっているのです。
それでもまだ、他の企業の社員や新入社員の平均年収よりも多いわけですが、一般的に考えれば、5年の間に年収が1000万円も下がってしまったら、大変な問題です。
さらに、この調査は、全ての弁護士から回答を得ているわけではありません。
2万人以上の弁護士に宛ててアンケートを送り、回答を得ることができたのは8000人弱の37%ほどです。
ですから、例えばアンケートの返送が無い中に、受け入れ先が見つからず就職することができなかった弁護士が含まれないとは限りませんし、そのような方がデータ外にはじかれていたとすれば、その数字は、もっと低くなることになります。
このような年収低下の原因は、政府による法曹需要予測の読み誤り、司法制度改革による法曹人口の拡大によって起きた弁護士余りによるものです。
ただ、それだけではなく、平均年収を2010年と2015年で比較してみたことでもわかるように、過払い金返還請求も大きく関わっていることは、数字からも明らかです。
2010年と言えば、過払い金の請求がピークとなった時期です。
過払い金ブームの時に勢力を拡大し、派手にCMを流してきたような新興系の法律事務所は、特にこの過払い金に関する依頼者の増減に、収入を左右されたことは間違いないでしょう。
着手金は、0円-2万円程度、解決報酬金が、相手1件につき相場2-3万円。
さらに、成功報酬金として、実際に取り戻すことのできた過払い金の20%が、弁護士が受け取ることのできる相場の割合です。
また、和解で終わらず、訴訟となった場合は、だいたい25%と言われています。
例えば上記の方法で、貸金業者3件から合計500万円の過払い金があった場合の弁護士報酬金を考えてみると。
・着手金 2万円×3件分 6万円
・解決法集金 2万円×3件分 6万円
・報酬金 500万円×20% 100万円
上記の例でいくと、依頼者1人に112万円の儲けとなるわけです。
ここから弁護に掛かる経費が差し引かれるとしても、単純に依頼者1人にこれだけの金額が動くとなると、弁護士やその事務所が過払い金返還請求で困っている依頼者の取り合いをするのも頷けます。
弁護士の数が増え、収入が減っていくという状況の中で、グレーゾーン金利無効の決定による過払い金返還請求は、弁護士業界にとっては、大変ありがたいことでした。
巨大ビジネスと化した「過払い金請求」に見え隠れする業界の問題と歴史
グレーゾーン金利撤廃と弁護士法人の顧客争奪戦
過払い金請求が、巨大ビジネスと化したのは、2006年に最高裁が、グレーゾーン金利を廃止してから、程なくのことです。
最高裁の判決後、利息制限法の上限金利15-20%と出資法の上限金利29.2%の間のグレーゾーン金利で借金をしてきた人たちが、払いすぎた金利(過払い金)分を貸金業者へ返還請求をしてお金を取り戻そうという動きが活発になりました。
参考記事:
借り手による返還請求が、急増すると共に、面倒な手続きや聞きなれない法的処理に困った利用者が、相談、訴訟のために弁護士法人や司法書士事務所を頼り、弁護士やアドバイスができる専門家の需要が一気に高まったのです。
さらに、弁護士事務所側からすると、政策による法曹人口の拡大によって、顧客の獲得が難しくなっていた上に、法的需要の見込みも外れ、年収が縮小していく中で、大変おいしい弁護であったことに間違いありません。
他の厳しい弁護に比べて、比較的容易に決着がつき、着手金や成功報酬が手に入るとなれば、過払い金請求で困っている依頼者を一人でも多く取り込みたいと思うのは無理もありません。
その儲け具合は、法律事務所が大きなCMを派手に打つその状況からも読み取れるように、お金がかかる広告を利用しても、なお、それ以上の利益が手元に残るほどだったのです。
その金額の大きさをアディーレ法律事務所による過払い金請求案件を例にしてみていくと、
2017年の4月までに総額2050億円以上の過払い金を回収したという同事務所の収益は、(報酬割合を弁護士事務所の平均20%で計算すると)着手金を除き、単純に過払い金の報酬だけで計算しても、410億円になります。
この金額を見るだけでも、いかに、過払い金請求に関する仕事が儲かり、顧客争奪戦を繰り広げるだけ価値のあるものかが分かるでしょう。
そして、それらのことを裏付けるように、この頃、債務整理事件処理を得意とする新興の大型法律事務所が、次々と登場し、急速に拡大してきたのです。
実際に、弁護士法人設立件数の推移を見てみると、2006年度まで年間ほぼ30件台を推移してきたものが、それ以降、2007年度は56件、2008年度82件となり、数年後の2014年には、年間の新設法件数が100件を超える程に増えたのです。
さらに、弁護士法人間の顧客争奪戦を過熱させたのは、過払い金請求には時効があり、依頼者数にも限りがあるという事実でした。
ご存知の通り、過払い金を請求することができる期限は、完済から10年です。
大まかな予想ではありますが、2006年のグレーゾーン金利廃止以降、2007年頃までにほとんどの貸金業者が、金利見直しを行い貸付金利の引き下げを済ませています。
ですから、2008年以降の新規取引には、過払い金が発生しているケースは、ほぼありません。
しかも、クレーゾーン廃止決定以降にわざわざ高い金利で借入した消費者がいるとは考えにくいので、例えば、2006年に最後の借入れをして、例えば36回払いで完済していたと考えると、過払い金請求の時効は、2019年でもうすぐということになります。
これが、60回、あるいは120回払いとなると時効もその分長くなるわけですが、2009年から2010年が過払い金請求のピークで、その後の返還請求件数は年々減少しているデータを見れば、法改正ギリギリで、120回払いを選択したなど稀なケースを除けば、この先数年で、過払い金返還は、終着ラインに到達すると予想できます。
ですから、弁護士法人側が、儲けの大きい仕事は、無くなってしまう前に少しでも多く取りたいと考えていたのは間違いないでしょう。
どこよりも目立つようにと、芸能人を起用したテレビでの広報や耳に残るラジオCM、相談無料といったサービスは、顧客争奪戦に負けまいと必死な気持ちの表れだったのです。
弁護士の規制緩和とは?広告自由化とその問題点
ただ、過熱していくサービスやCM合戦を見て、倫理や平等、正義という弁護士のイメージと、どこか浮ついて見える広告が不釣り合いだと思った方は少なくないはずです。
今から600年以上も前の『百寮訓要抄』にも「明法博士、法曹儒才の人、これに任じず、殊に才明あるを選らばるべし、律令格式をたしなむ、是、法曹と申すなり」記されてきたように、日本の中で法曹と言えば、平等や正義と同時に厳しく行いを正す格式高いものでした。それにあたる人物は、優れた才覚と礼節を備え、相手を思いやる心を持っていなければならないとされ、長い歴史の中で守られてきたのです。
このようにそもそも、格式を重んじてきたはずの法曹業界に何が起こり、CMのような一般企業と同様の広告の手法を利用するようになったのでしょうか?
先にも申し上げたように、これからの日本の社会には、弁護士が必要という考えから、誰もが平等に弁護士を利用することができるように、過疎地域にも弁護士法人をおきましょうなどとして政府は、弁護士人口を拡大する改革を進めてきました。
これによって、弁護士人口は拡大したものの、法的需要と法曹人口のつり合いが取れず、職に就けない弁護士も増え、一方で弁護士法人は顧客争奪が激化したという背景があります。
さらに、これまでの弁護士像を守ろうとする人たちがいる中で、新興法律事務所の台頭といった現象も加わり、弁護士業界自体の仕事に対する価値観や考え方を否応なしに揺さぶられていったのです。
「これからは弁護士のサービスを必要とする市民が増える」、直接的な表現を利用しない場合でもこの「サービス」という言葉と概念に、弁護士業界は、翻弄されることになるのです。
サービスと聞くと、商業性が高くなる印象を受けます。
法曹に従事すると言っても、一般市民と同様に一人一人に生活があるわけですし、経営者であれば法人が潤うに越した事はありません。
しかし、依頼人の気持ちなどお構いなしに、利益第一主義の弁護士が、多く存在するとは思いたくありませんが、商業や産業というイメージに偏れば、「弁護士だって、サービスを売ってお金儲けをして何が悪い!」という人も出てくるでしょう。
ただ、弁護士に限ったことではありませんが、世に言われる「先生」と呼ばれる職業に「サービス」という横文字がついて回る事によって、イメージだけでなく秩序や体制をも大きく変える可能性を孕んでいます。
それが利用者にとって良い変化であればいいのですが、サービスを重視するあまりに他方が疎かになったり、サービスを提供する側が儲け重視の効率至上主義に走ってしまっては、あまりにこれまでの法曹とは違ったものになるでしょう。
話を「宣伝広告」に戻せば、そもそも、弁護士には無かった広告の自由は、21世紀を境に変わったのです。
2000年3月の日弁連総会によって広告に関する規定改正が行われ、同年10月1日から会則上、広告は、原則自由となったのです。
この改正を行うにあたっての日弁連の目的は「市民が利用しやすい司法」「市民に身近な司法」のためというものでした。
これを実現させるために、広告は、市民からの弁護士へのアクセスを容易にすること、そして、多くの市民に司法が身近に在ることを広められるとして、規制しない方が良いとしたのです。
ただし、自由とはいえ、もちろんどのような広告でも良いということではありませんでした。
例外的に禁止されたのは、直接的な勧誘広告、事実と違う、誘導・誤導の恐れのあるもの、過剰に期待を抱かせるもの、品位・信用を損なうもの、他の弁護士法人や個人との比較、その他、法令・会則に違反するものです。
しかし、残念ながら、過払い金請求を扱う弁護士事務所と熾烈な顧客争奪戦によって、弁護士という立場にあるにも関わらず禁止事項を破って、利益を上げようとする法人が出てきたのです。
広告の自由による規制緩和については改正当初、一部の弁護士から、営利主義に走る弁護士が増えるのでは?という声がありました。
しかし、その予想通り、2006年以降時代と社会の動きも加担して結果的にそのような向きに流れたのです。
過払い金バブル⁉︎の果てにあわらになった数々の悪行
ただ、法的需要の少なさに仕事が取れずにいた弁護士にも、弁護士過多で就職先が見つからない若手にとっても、過払い金返還請求は、窮地を救う仕事だったに違いありません。
まさに、降って湧いたようなという表現がピタリと当てはまりますが、過払い金返還請求を巡っては、なんと!このタイミングで!というように、どこかで誰かが救われる不思議な現象が起きています。
それは、先に挙げた、政府が司法改革として行った法曹人口拡大の後、生活に困った弁護士を救ったグレーゾーン金利撤廃。
過去に遡って返還請求をするという最高裁の驚きの判断の裏で、貸金業者は地の底を這い、一方で、政府の政策によって窮地に陥っていた弁護士は、これによって救われたのです。
そして、政府が司法改革の読み誤りを咎められ始めた頃、弁護士に過払い金返還請求によって大金が流れ込むようになり、こちらもタイミングよく話題が逸れていった印象でした。
また、弁護士が過払い金請求で儲け出した頃、貸金業者は、百数十億の赤字を計上、一方、闇金は、その赤字を超える数100億円の儲けを叩き出したと聞きます。
ただ、この件に限らず、偶然かカラクリか判断がつかないが、素晴らしいタイミングで特に力が強いとされる方の立場が保たれるといった出来事が発生する事は、社会を眺めてみると以外と多いものです。
それはさて置き、今回は、法科大学院開設など大きな予算を充てた司法改革の話題をかき消すほどのインパクトが、過払い金返還請求にはあり、動いた金額も相当なものでした。
全国の貸金業者が2008年度に返還した過払い金の合計金額は約1兆円と言われています。
弁護士業界の報酬の相場を20%として計算しても、この年、同業界には2千億円のお金が入ったことになります。
さらに、弁護士の中には、年間1億円に届く程の報酬を受けてきた人もいると言われています。
そのように大きな額が動く仕事ですから、あまりの派手さに本来の立場を見失い依頼人よりも自分の利益を優先し、トラブルになるケースも目立つようになっていきました。
例えば、弁護士名義を資格のない法人に貸すことで報酬を得ていたケース。
過払い金の返還請求金額を実際の金額よりも過小に偽り、依頼者に返還すべき金額を偽ったもの。
さらに、借入のために消費者金融に行ったら、債務整理をしたほうがいいと、弁護士事務所に行くようにアドバイスされたというように、裏で消費者金融と弁護士が結託し、金銭のやり取りがあったケース。
依頼人を斡旋する紹介屋に頼る弁護士など、さまざまな方法を利用して悪に手を染める弁護士が増えていったのです。
広告を利用した顧客争奪戦、利用者が喜ぶサービスなど、そもそも、弁護士職には営利企業のような競争が適切なのでしょうか?
司法を司る女神として言われるギルシャ神話のユースティティア、その女神が、目隠しをしているのは、貧富の差や権力の有無に関係なく法が等しく適用されることを表しているからと言われています。
かつて、この女神のようなあり方を目指し、誇らしげに弁護士バッジを付けたその思いは、現在の弁護士には薄れてきているのでしょうか。
正義は何かを見極めるはずの弁護士が、大金を目の前に簡単に志を捨てるような行いは、司法に従事する者にあってはならないはずです。
生存競争に敗れ、生きるためにやむなく非弁提携に手を出す弁護士が次々と出てくるような法曹界に、良い司法などあり得るのか大いに疑問が残るところです。
最後に~アディーレ法律事務所に依頼をしていた人々はどうすべき?~
そして、アディーレの一件で一番困っているのは、アディーレを利用していた依頼人の方々でしょう。
業務停止の発表翌日に出廷を控えていたという方や過払い金返還請求の時効ギリギリという状態の方もいらっしゃったかもしれません。
これについて、まず、アディーレは、弁護士会からの処分言い渡しがあった翌々日の日付で依頼者に業務停止に関してのお詫びと契約解除後の対応について文書を発送しています。
それによると、アデーレの依頼者は契約解除後、以下3つのうち、いずれかの方法を選択して個々に手続きを進める必要があります。
①専門家の手を借りず自力で対応していく方法
②新たに別の弁護士を探し契約する方法
③アデーレ所属弁護士に、個人として契約する方法 です。
①②を選択した場合には、依頼者もしくは新しく依頼した弁護士に、委任事件の遂行状況、資料、預り金等の引継ぎされ、③を選択した依頼者は、アディーレに所属していた弁護士に個人として引き継がれます。
ですから、担当弁護士と連絡を取ることができればということを前提とすれば、③の方法は①②と比較すると若干手間が省けるでしょう。
ただ、どの方法を選択するにせよ時間と労力がかかるのに違いはありません。
このような手続きは面倒だからと、アディーレの業務停止期間終了を待って、契約は続行させておきたいという依頼者もいるようですが、契約解除は、日弁連による弁護士法人の業務停止期間中の業務規則によって定められていますので、上記いずれかの方法を選択し、自分で手続きをするしかありません。
それが面倒だと、業務停止期間解除を待ちたいという依頼者もいるようですが、契約解除は規定によって定められていますので、何れにしても自分が動くより方法はありません。
依頼者への文書発送から遅れること数日、10月19日にはアディーレの公式HPにも、「弁護士会からの業務停止処分についてのお詫びと契約解除の状況に関してのご案内」が掲載されました。
こちらには、着手金の計算や訴訟依頼をしていた場合の対応など、上記以外にも多く寄せられる質問への回答も載っています。
また、アディーレ法律事務所への問い合わせ電話は、なかなか繋がらないという状態が続いています。
不安と焦りで、すぐに誰かに頼りたいと考えるのはわかりますが、そこは、きちんと見極める必要があります。
注意すべきは、アディーレ法律事務所が懲戒処分となってから、特に過払い金返還請求案件を得意とする他の法律事務所が、挙ってアディーレの契約者へ向けて、営業を始めていることです。
「アディーレでお困りの方へ!」「アディーレと同条件でお引き受けします」という記載を掲げ、アディーレの依頼者だった方々だけに向けて広告を打ち、以前の契約同様にお得に、そして、頼りを無くして焦っている人々が、「これなら引き継ぎも簡単で助かる!」という期待を抱きかねない条件と広告が打たれています。
これらの広告が、困っている人を助けたいという弁護士の心持によってなされたものならいいのですが。
アディーレの一件を利用した新たな顧客争奪戦なのであれば、こちらもまた、過払い金返還請求をビジネスとした新たな問題として、気を付けて見ていく必要があります。
上記、②の方法を選択する場合には、新たに契約をした弁護士が前任の弁護士と連絡を取り、引継ぎをしてくれる可能性が高いですが、①②を選択する場合には、アディ~レに支払った報酬金や訴訟等の引継ぎを自身で行わなければなりません。
ですから、必ず、アディーレ法律事務所、または、担当弁護士と連絡を取らなければなりません。
何度、電話をかけても繋がらないという状態で、お困りの方が多いと思いますが、問題解決には必要なことですので、投げ出さず、時間を見つけて電話をかけるよう努めてください。
また、担当弁護士の携帯やメールなど別の連絡方法がある場合には、そちらにも連絡をしましょう。
さらに、事務所を直接訪ねるというのも一つの方法です。
ただ、直接足を運んでも、規制上、事務所の看板ははずされていますが、弁護士が在室している可能性もありますので、できる限りのことはしたいところです。
また、事務所を訪ねるにあたって「アディーレのHPが消されていて住所がわからない」という場合でも、日弁連のHPから、事務所名あるいは、弁護士名で検索できるようになっていますので、そちらを利用されるといいでしょう。
そして、アディーレと連絡をとる努力をし続けるのと同時に、東京弁護士会の臨時相談窓口にも電話をしてみましょう。
ただし、こちらの電話も大変込み合い、連日繋がらないという状況が続いています。
ですから、その場合には、弁護士会が運営する法律相談センター、あるいは、各県の弁護士会、日本司法支援センター(法テラス)にも同時に連絡をしてみましょう。
なお、全国の弁護士会、法律相談センターの所在地等は、日弁連HPから検索できますので、分からない場合には、そちらを利用してみるといいでしょう。
さらに、調べてみると全国の各弁護士会でも特別相談窓口を設置、あるいは、相談会を行っている場合がありますので、アディーレに連絡がつかず、困っているということであれば、こちらも早めにチェックされることをおすすめします。
アディーレに電話が繋がらず、不安で、どこでもいいから早く代理人契約をしたいという気持ちもわからなくはありませんが、契約破棄という事態に困り果てた顧客を狙った新たな問題が起こらないとは限りませんし、最終的に自分の財産を守るのは自分だけです。
上に取り上げた方法は、公の機関を利用するものです。
対応に追われて大変な時に、困り果てたアディーレ依頼者の弱みに付け込んだ罠にかかり問題を増やさないためにも、まずは、上記いずれかの公な機関に連絡を取ることをおすすめします。
今回の一件では、アディーレの行ってきた問題への批判はもちろんではありましたが、処罰決行以降は、アディーレへの処罰のみに執着し、依頼人を置き去りにしているとして東京弁護士会の見通しの甘さへの批判が広がっています。
法曹界は、国民にとって近寄りがたい存在であるだけに、その内部を知ることは、覗き見ようと思う者にとっても難しく、知り得る術がないという風潮があるように思われます。
法を生業とする者が、権力や富、地位や名声に魂を捧げるようなことはないと思いますが、
果たして、法の公正を象徴する女神に恥じることのない裁きが行われているのか?万人に等しく適用される「法の下の平等」は理念だけに留まってはいないか?今回の一件では、多くの人が、法について考えるきっかけにもなったのではないでしょうか。
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※ 審査時間や融資時間に関しては、お申し込み時間や審査によりご希望に沿えない場合がございます。