新型コロナに関する給付金には税金がかかる?課税・非課税の差とは?
国民ひとり10万円の給付金をはじめとして、新型コロナウイルスに関しては様々な給付金などの経済支援策が打ち出されています。
特に収入に大きな影響を受けている、事業者に対する経済支援は多いです。
休業要請や外出自粛によりほとんど売り上げがないという事業者もいるため、手厚い経済支援を受けられるのはありがたいですよね。
例えば、新型コロナにより一定基準以上、売り上げが減少した事業者は持続化給付金を申請でき、法人は最大で200万円、個人事業主は最大100万円の給付金を受け取ることができます。
個人事業主である筆者も利用可能な給付金は多く、条件を満たす場合は申請しようと思っているのですが、給付金に関して次のような声があがっていることを知っていますか?
「コロナで売り上げが落ち込んでいるのに、給付金や協力金に税金がかかるのはおかしい!」
そうなんです!持続化給付金など事業者向けの給付金は課税されるため、受け取った金額はしっかりと申告しなければいけません。
給付金だからといって、そのまま全額が非課税の所得になるわけではないのです。
その一方で、国民ひとり10万円の給付金については非課税で、申告も必要ありません。
なぜこのような違いあるのでしょうか?
色々と調べてみると、実は事業者向けの給付金に税金が発生するのは、できるだけ平等に税金を徴収するためだと分かりました。
この記事では、新型コロナウイルスに関する給付金などで税金がかかるものはどれか、なぜ課税・非課税の差が出るのかについて迫っていきたいと思います。
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新型コロナウイルス感染症に関する主な給付金・助成金
新型コロナウイルス感染症に関する給付金や助成金には様々なものがありますが、今回は主なものとして特別定額給付金、持続化給付金、雇用調整助成金、休業要請の協力金の4つについて取り上げます。
簡単に金額の目安と課税対象かどうかを表にまとめました。
【新型コロナウイルスに関する主な給付金・助成金】
給付金・助成金 | 課税・非課税 | 金額の目安 |
---|---|---|
特別定額給付金 | 非課税 | 国民ひとり 一律10万円 |
持続化給付金 | 課税対象 |
法人:最大200万円 |
雇用調整助成金 | 課税対象 | 支払額の8~9割程度 |
休業要請の協力金 | 課税対象 |
一律50万円 |
この表を見ると分かりますが、国民全員が対象となる特別定額給付金については非課税ですが、それ以外の事業者向けの給付金、助成金、協力金に対しては税金がかかるのです。
例えば、東京都などの地方自治体では休業要請、短縮営業に応じた事業者に対して、一律50万円の協力金を出していましたが、税金がかかるため丸々50万円が貰えるものだと思っていると、来年の税金で困ってしまうかもしれません。
それぞれの経済支援策の概要と税金について説明していきます。
特別定額給付金
すでに申請を済ませ、口座に振り込みがあった方も多いと思いますが、国民ひとりにつき10万円の特別定額給付金は非課税です。
一律で10万円を給付しつつ課税対象にすることで、年収に応じて税金を徴収すべきという声もあったようですが、結果としては非課税となりました。
所得税は年収によって税率が変わる累進課税なので、所得が多いほど納める税金は増えます。
そのため、給付する金額は一律10万円でも、税金を考慮すると所得の少ない人にはそのまま10万円、所得の多い人は10万円よりも少ない金額が事実上給付されるといった仕組みにすべきという意見もあったのです。
ただ、速やかに、確実に10万円を給付するということを重視し、特別定額給金については非課税となったようです。
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持続化給付金
持続化給付金は新型コロナウイルスの影響により、前年同月比で売り上げが50%以上減少した事業者などへの給付金で、法人は最大200万円、フリーランスを含む個人事業主は最大100万円までの給付です。
給付金としてはかなりの金額ですが、法人、個人のいずれの場合も課税対象です。
受け取った金額は事業所得として申告することとなります。
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雇用調整助成金
経済的な理由によって事業を縮小せざるを得ない事業主が、雇用を維持するために休業手当を従業員に対して支払った場合、その金額の一部を助成するのが雇用調整助成金です。
新型コロナウイルスに関しては、特例措置が実施されており、日額上限額の引き下げなど制度が大きく拡充されています。(緊急対応期間:2020年4月1日〜9月30日)
助成率は企業規模によっても異なりますが、中小企業であれば8~9割程度です。
この雇用調整助成金についても課税対象となります。
休業要請の協力金(東京都など)
東京都などの地方自治体では要請に応じて休業、短縮営業などを行った事業者に対して協力金を支払っていました。
東京都の場合、支給金額は一律50万円で、2営業所以上の休業・短縮営業だと100万円です。
「自治体からの協力金」と聞くと非課税のイメージがあるかもしれませんが、これにもしっかりと税金がかかるので注意してください。
非課税の特別定額給付金は確定申告する必要なし?
持続化給付金などの事業者向けの給付金や助成金については、そもそも事業者でない方、事業者でも要件を満たしていない方は受け取ることができないため、国民全員に関係する給付金といえば「特別定額給付金」になります。
前述の通り特別定額給付金は非課税なので、受け取った10万円に対して所得税や住民税などはかかりません。
また、「確定申告をしないといけないの?」と思っている人もいるかもしれませんが、この10万円に関しては申告不要です。
会社員など自身で確定申告をする必要がない人はもちろん、個人事業主など毎年確定申告をしている人も、特別定額給付金に関しては申告する必要がないので安心してください。
本来は課税対象でも特例で税金がかからないものもある?
特別定額給付金と同様に、新型コロナウイルスに関連して一部、非課税扱いになっているものは他にもあります。
【例:新型コロナウイルスに関連して非課税扱いになっているもの】
・子育て世帯への臨時特別給付金
・企業主導型ベビーシッター派遣事業の割引券
・東京都などのベビーシッター利用支援事業 など
ベビーシッターに関する制度は、本来かかる料金の大半を自治体などが負担してくれ、通常よりもかなり低い金額でベビーシッターを利用できるという制度になります。
この代わりに負担してもらった金額は、雑所得の扱いになり、本来であれば確定申告しないといけません。
ですが、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、非課税の措置も取られています。
この点は従来のベビーシッター利用支援事業の内容とは異なる部分です。
このように本来は課税されていたものも、新型コロナに関連する場合は非課税となっているケースがあるため、利用する方は事前に調べるようにしてください。
課税されることを知らずに制度を利用していると、想像以上に来年の税負担が大きくなるでしょう。
事業者向けの給付金・助成金は課税対象になるので注意
事業所得を得た場合、個人であれば所得税、企業であれば法人税を年間の所得に応じて負担することになります。
特別定額給付金のように非課税とされているものも一部ありますが、事業者向けの給付金や助成金は基本的に課税対象だと思った方が良いでしょう。
そのことを知っておかないと今年は何とか乗り切ることができても、来年、税金を納めることができず事業の存続が危なくなるなんて可能性もあるのです。
「はじめから税金を引いた金額を給付してくれたら良いのに!」と考える人もいるかもしれませんが、1年間の所得に応じて税率が決まるため、給付額から税金を事前に天引きすることは難しいのです。
今年受け取った給付金・協力金にかかる税金はいつ支払うの?
2020年内の給付金や協力金については、来年2021年の確定申告で申告することになります。
つまり、所得税や法人税も基本的にそのタイミングでの納付です。
ただし、税務調査では過去の申告をさかのぼって申告内容が適切だったか調査されることもあります。
通常の税務調査では過去3年分が対象になりますが、そこで申告のミスなどが見つかった場合には過去5年分まで対象期間が延びます。
さらに、悪質な場合や不正があったと思われる場合は、過去7年分の申告内容をさかのぼり調査が行われることになるのです。
そのため、もし2020年内に受け取った給付金・協力金の処理でミスや不正があれば、2021年以降でもそれが指摘され、追徴課税を受ける可能性もあるでしょう。
給付金・協力金を受け取っても課税されないケースとは?
事業者に対する給付金・協力金などは基本的に課税対象ですが、それは必ずしも税金(所得税・法人)が発生するという意味ではありません。
先ほども説明したように、所得税や法人税は所得によって納める金額が異なります。
給付金などは事業所得として計上することになるものの、1年間を通して見たときに赤字なのであれば、そもそも税金が発生するような所得はないということになるのです。
そのため、「赤字の上に、給付金に対する税金も納めないといけない」なんてことにはなりません。
法人・個人事業者の納税に関しては猶予の特例も
2020年の話ですが、新型コロナの感染拡大を受け、法人や個人事業主の納税(国税)を猶予する特例もあります。
制度を利用できる場合、納税を猶予してもらえ、その期間は最大1年間です。
そして、新型コロナに関する特例では、次の条件を満たす場合に、1年間の猶予とその期間中の延滞税の全額免除を受けられます。
【令和2年2月1日~令和3年2月1日に納付期限を迎える国税に関する特例猶予】
新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、事業などの収入が前年同期比でおよそ20%以上減少していること
この特例は令和3年2月1日までに納付期限を迎える国税が対象なので注意してください。
国税の猶予に関しては「国税局猶予相談センター」に電話をすれば相談できます。
来年度も新型コロナに関する特例があるかは分かりませんが、従来の猶予制度で対応できるケースもあるため、このような制度、相談センターがあることは覚えておきましょう。
事業者向けの給付金が課税対象なのは公平性を保つためという指摘も
新型コロナに関連する給付金が課税対象である以上、受け取った金額はしっかりと申告しなければいけません。
給付金を申請した事業者を国は把握しているため、適切に計上しているかはチェックされる可能性が高いでしょう。
ただ、課税対象になると分かっていても、感情論としては、納得できない気持ちも分かります。
この給付金が課税対象となる問題については様々なメディアでも扱われていますが、そこで度々指摘されるのが公平性についてです。
完全に非課税となると、給付金を受け取っていない事業者と税金の面で不公平になってしまいます。
また、給付金を貰っていても、別途、経費を計上することが可能です。
その場合、税金のかからない所得(給付金)に加えて、さらに経費によって課税対象となる所得の金額は減ることになります。
そうなると、コロナ禍の中でも努力によって売り上げを維持していた事業者よりも、税金の面で、給付金などで売り上げを補填した事業者の方が大きく優遇されることになってしまいます。
そのような意味でも、事業者に対する給付金や協力金などは課税対象となっているのです。
給付金や協力金などは課税対象になるものの、どのくらいの税金を納めることになるかは、年間の所得によって異なります。
所得が多ければ納める税金も増え、所得が少なければ税金は減るのです。
例えば、コロナの影響で1ヶ月丸々売り上げがなかったものの、その後は例年通りの所得だった事業者と、売り上げがほぼ1年にわたり大幅に減少した事業者がいるとしましょう。
非課税だったとしたなら、受け取る給付金が同額の場合、短期的な影響で済んだ事業者の方が本来納めるべき税額よりも得をすることになります。
先ほども説明しましたが、給付金などを含めても赤字なのであれば、課税の対象となる所得がないため税金はかかりません。
「コロナで大変なのに、税金も取られるのか…」と感じるかもしれませんが、公平性を保つという意味では妥当でしょう。
【まとめ】新型コロナに関する経済支援策には課税・非課税のものがある!課税対象だと申告が必要なので注意
新型コロナウイルス感染症に関する給付金などの税金について説明してきました。
基本的に新型コロナに関する国や地方自治体からの経済支援でも、受け取ったお金は所得して申告する必要があります。
国民ひとり10万円の特別定額給付金は非課税ですが、事業者向けの給付金などは課税対象だと思ってください。
そのため、受け取った金額は、事業所得として来年の確定申告でしっかりと計上しましょう。
確定申告に不備があれば、追徴課税などを受けることになります。
加えて、税務調査の対象になると過去3年分、場合によっては過去5年~7年分の申告内容を調査されることになるため、数年後に給付金の申告について指摘されるかもしれません。
ただ、所得税、法人税は1年間の所得で計算されるため、赤字であれば事業所得に対して税金はかかりませんし、所得が大幅に減少したなら納める税金もかなり減るはずです。
納める税金を公平にするという意味でも、事業者向けの給付金などが課税対象になるのはしかたないことだといえます。
事業者向けの給付金以外にも課税対象となる経済支援もありますが、いずれにせよ税金がかかることを理解した上で申請することが重要でしょう。
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