債務整理の最中に自己破産へ移行する事はできるのか?
個人再生が認可されて借金が減額されたにもかかわらず個人の都合で最終的に支払いが出来なくなった場合、個人再生から自己破産に移行することは出来るのでしょうか。
■個人再生が認可された後に、再生計画を実行できなくなった場合は?
個人再生を申し込んでいる段階では継続的な収入の見込みがあり、再生計画にしたがって返済が出来る予定だったにも関わらず、その後、病気や事故など何かしらの事情で、返済が滞るようになってしまうことがあります。
この場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
果たして、個人再生から自己破産に移行することは出来るのでしょうか。
再生計画に基づく返済が難しくなったとしても、債権者によっては1回くらいであれば返済を猶予してくれることもあります。
もしくは、再生計画を変更し、期間を延長する間に返済出来る見込みがあるのであれば、個人再生を続行できる可能性もあります。
また、再生計画を変更しても支払いが難しいときは、ハードシップ免責の制度を検討するのも手です。ハードシップ免責とは、再生計画の3/4以上を弁済していれば、残りの債務をチャラに出来る制度です。
個人再生が滞りはじめたら、まずは「再生計画の変更」「ハードシップ免責の利用」を検討しましょう。仮に、この2つでも解決できなくなった場合には、自己破産への移行を進めることになります。
■再生計画を取り消さないと、自己破産の申告は出来ないので注意
個人再生が確定した後、債務者の状況を裁判所などが逐一監視している訳ではないので、債務者の支払いが滞ったとしても、裁判所がすぐに再生計画を取り消すことはありません。再生計画を取り消すためには、債務者が裁判所に対して再生計画の取り消しを申請しなければなりません。
その一方で、自己破産を申請するためには、裁判所に対して債務者が借金の支払いが出来ないことを示す必要があります。
そもそも、個人再生が認可され借金が大幅に減額されている訳ですから、さらにそこから「支払いが出来ない」ことを示すことは難しいとされています。
そのため、まずは債権者の方から再生計画の取り消しを申請してもらい、借金を元通りにしてから、改めて裁判所で自己破産の手続きを進めるという形がとられます。
■裁判所が職権で自己破産手続きをおこなうこともある
個人再生の手続きをおこなっている最中に、裁判所の判断で自己破産へ移行させることも法律の上では出来ます。
民事再生法250条によると、「再生手続開始の申立てが棄却されたとき」「再生手続きは廃止されたとき」「再生計画が認可されなかったとき」などの場合は、裁判所の権限で個人再生から自己破産へと切り替えることも可能です。
しかしながら、実際のところ、裁判所が職権を行使することは多くはありません。
裁判所が積極的にこのようなことをおこなってしまうと、債務整理の申請をためらってしまう方が増えるおそれがあるからです。
一般的には、債務者自らが自己破産を申請する形が大多数を占めています。
■個人再生から自己破産へ移行する際に、何か制限はあるのか?
個人再生から自己破産に切り替えるときに、大きく2つの場合には制限がかかります。
1.給与所得者等再生の遂行から7年以内に自己破産を申請した場合
給与所得者等再生が確定した日から7年以内に自己破産を申請した場合には、免責不許可事由という判断が下されてしまいます。
免責不許可事由とは、自己破産を申請しても借金が帳消しにならないという意味であり、これだと自己破産をしても意味がありません。
ただし、再生計画に基づいて借金を返済している間は、この制限は当てはまりません。
返済計画を完遂した方のみ7年間の制限があるという意味です。
言い換えれば、認可が決定してから3年間で弁済した場合には、残りの4年間だけ制限があるということです。
また、たとえ免責不許可事由と判断されたとしても、裁判官の権限で免責という処置を受けられることもあるので、あきらめずに一度弁護士などに相談してみると良いでしょう。
2.ハードシップ免責を利用した場合
こちらの場合も、ハードシップ免責が確定した後7年間は自己破産をしても免責不許可事由と判断されてしまいます。
もともとハードシップ免責とは、再生計画の3/4以上の支払いが済んでいる場合、残りの返済をチャラにする仕組みなので、ここから自己破産をすることは7年間出来ません。