「自己破産」という言葉を聞いたことがあっても、どのような手続きなのかを知らない人も多いですよね。
自己破産とは債務整理の方法の1つで、裁判所から許可が出ると借金の返済義務が免除されます。
つまり、自己破産をすれば借金を返さなくても良くなるのです。
ただ、このような大きなメリットがある一方で、自己破産にはデメリットもあります。
例えば、自己破産をすると所有する財産の一部が没収され、返済に充てられるのです。
そのため、「借金をしても自己破産すれば大丈夫でしょ?」と考えるのは危険でしょう。
自己破産するのにも条件があるため、誰でも簡単に手続きできるものでもありません。
この記事では、自己破産とはどのような債務整理なのか、そのメリットとデメリットについてまとめました。
自己破産は他の債務整理と比べて名前は有名ですが、実は、間違ったイメージや情報というのもたくさんあります。
「自己破産をすると何が没収されてしまうの?」「自己破産をすると周りにバレるの?」など様々な疑問についても回答していくのでぜひ参考にしてください。
自己破産とは何?任意整理や個人再生との違い
記事の冒頭でも説明したように、自己破産というのは債務整理の方法の1つです。
債務整理とは、借金を減らしたり返済条件を変更したりする手続きの総称で、中でも自己破産というのは借金の返済義務が免除されるもっとも減額効果の大きい債務整理になります。
債務整理には任意整理や個人再生といった方法もありますが、これらは借金の返済を継続しなくてはいけません。
借金そのものを減額したり、返済期間を延長することで月々の負担を減らしたりできるものの、手続きをしてからも返済は続くのです。
一方、自己破産をすると借金の返済義務がなくなります。
破産を申し立て、裁判所から免責許可を受けることで借金の返済義務が免除されるのです。
ただし、借金の返済に困っている人が全員、自己破産を選択しているわけではありません。
基本的にはメリットの大きい債務整理は、それに伴いデメリットも多くなります。
そのため、減額効果はそれほど高くないものの、デメリットが少ない任意整理を選択している人も多いのです。
必ずしも自己破産が最適な解決策とは限らないため、どのようなメリット、デメリットがあるのかを知った上で判断することが重要になるでしょう。
自己破産のメリット
自己破産のメリットには、主に次のようなものがあります。
【自己破産のメリット】
・借金の返済義務が免除される
・安定した収入がなくても手続きできる
・必要最低限のものは手元に残せる
借金の返済義務が免除される
繰り返しになりますが、自己破産は借金の返済義務を免除してもらえます。
任意整理や個人再生は減額のみで借金の返済義務は残るため、他の債務整理と比べて大きく異なる部分でしょう。
債務整理の減額効果
【自己破産】
借金の返済義務が免除される(一部、免責されない債権もあります)
【個人再生】
債務総額に応じて、借金を1/5程度まで減額する
【任意整理】
利息をカットする
どの債務整理の方法が適しているかは人によって異なりますが、借金の返済義務が免除される自己破産は最終手段だと考えてください。
まずは任意整理を検討して、それでも返済できなそうであれば、個人再生、自己破産とより減額効果の大きい債務整理も検討していきます。
任意整理のメリット・デメリット!クレジットカードは?バレないの?任意整理とは何かを徹底解説
個人再生のメリット・デメリット!住宅は残せる?バレないの?個人再生とは何かを徹底解説
安定した収入がなくても手続きできる
前述のメリットとも関連しますが、自己破産は免責されれば借金の返済義務がなくなるため、安定した収入がない人でも手続きできます。
任意整理や個人再生は債務整理後も返済を継続します。
手続き前よりも支払いの負担は減るでしょうが、そもそも返済能力がないと債務整理できないことも多いのです。
任意整理は債権者と返済条件を直接交渉するのですが、返済が見込めないなら和解するのは難しいでしょう。
また、個人再生については、裁判で再生計画案(返済計画)を認可してもらわないといけません。
いずれも安定した収入があり、減額後の借金を一定期間内に返せるという前提の手続きなのです。
しかし、自己破産については条件を満たしているなら、返済能力がなくても手続きできます。
詳しくは「自己破産できる条件」の中で説明しますが、むしろ、十分な収入があり返済が見込めるのであれば自己破産の要件を満たせない可能性も高いです。
自己破産というのは、「到底返すことのできないような額の借金を負っている」「ケガ・病気などで働くことのできない」といった場合でも手続きできるという点がメリットの1つになるでしょう。
必要最低限のものは手元に残せる
自己破産をすると所有しているすべてのものが没収されてしまうと思っているかもしれませんが、それは間違った思い込みです。
自己破産をしても生活に必要な最低限のものは手元に残せるため、人によってはそこまで大きな影響がない場合もあります。
また、差し押さえが禁止されているもの(差押禁止財産)もあり、それらは自己破産をしても差し押さえの対象にはなりません。
一定以上の価値がある財産については現金に換えられ、債権者への返済に充てられます。
そのため、財産を持っている人ほど影響は大きくなりますが、すべてが没収されるわけではないのです。
例えば、自宅などの不動産や自動車に関しては一定以上の価値が認められる可能性が高く、それらを残したまま自己破産するのは難しいでしょう。
所有している財産への影響と減額効果を比較した上で、自己破産を検討することが重要です。
自己破産のデメリット
「借金の返済義務が免除される」という大きなメリットが自己破産にはありますが、その分、次のようなデメリットもあるのです。
【自己破産のデメリット】
・持っている財産が没収されてしまう
・クレジットカードなどをしばらく利用できない
・借入残高のあるローンはすべて破産手続きの対象になる
・ギャンブルや浪費が原因の借金では自己破産できない
・一時的に資格や職業に制限がかかる
・自己破産をすると官報に掲載される
・同居している家族がいるとバレる可能性が高い
数だけを見るとメリットよりも多いですが、人によってはほとんど影響のないものもあるでしょう。
そのため、自身と関連するデメリットだけを重点的に確認していけば大丈夫だと思います。
持っている財産が没収されてしまう
自己破産をしても生活に必要な最低限のものは残せますが、それでも財産への影響は少なからずあります。
何が没収されるかは裁判所によってルールが若干異なるものの、例えば、現金については99万円までしか残せません。
反対にいえば、99万円までは残せるのですが、超過した金額は強制的に債権者への返済に充てられるのです。
また、価値が20万円を超えるかどうかが基準になる場合もあります。
自宅は難しいでしょうが、自動車などであれば評価額が20万円を下回るケースもあるでしょう。
その場合には、自動車を処分されることなく、自己破産できるのです。
ただし、先ほどもいいましたが、実際の運用については裁判所によって異なります。
自己破産は法律事務所に依頼することが多いですが、その際に、管轄の裁判所がどのような運用なのかを確認すると良いでしょう。
クレジットカードなどをしばらく利用できない
自己破産などの債務整理を行うと、信用情報にその記録が残ります。
信用情報はクレジットカードやローンの審査に利用されているので、自己破産したという情報が載っている間はそれらを利用することはできないと思ってください。
自己破産の情報が登録される期間は5年間~10年間で、信用情報機関によって年数が異なります。
信用情報に自己破産が記録される年数
【株式会社 日本信用情報機構(JICC)】:5年間
【株式会社 シー・アイ・シー(CIC)】:5年間
【全国銀行個人信用情報センター(KSC)】:10年間
※信用情報機関と自己破産が記録される年数
これらの3社は提携関係にあり、自己破産などの重要な情報については共有されています。
そのため、5年間が経過してJICCやCICから記録が消えたとしても、KSCから情報が削除されるまでは影響があると思った方が良いでしょう。
消費者金融やクレジットカード会社は主にJICCやCICに加盟していますが、だからといって、そこでの審査に通過できるわけではないのです。
借入残高のあるローンはすべて破産手続きの対象になる
自己破産ではすべての債権者が平等に扱われないといけません。
特定の債権者だけを恣意的に優遇したり、手続きの対象から外したりはできないのです。
・保証人がいるものに関しては保証人へ請求がいきます
・担保を設定しているならそれは没収されてしまいます
任意整理であれば返済条件を交渉する債権者を選択できるので、保証人がいる借金は手続きの対象から外すといった調整もできますが、自己破産の場合には借入残高のあるすべてのローンが対象になるのです。
自己破産をするときは保証人への影響も考えた上で手続きすべきでしょう。
ギャンブルや浪費が原因の借金では自己破産できない
次章で詳しく説明しますが、自己破産には「免責不許可事由」というものがあります。
自己破産は申し立てるとすぐに借金がチャラになるわけではなく、免責許可が下りないと返済義務はそのままです。
免責不許可事由とは読んで字の如く、免責が認められない原因を意味します。
例えば、ギャンブルや浪費が原因の借金は免責不許可事由に該当し、破産手続きを申し立てても免責されない可能性があります。
一時的に資格・職業に制限がかかる
自己破産では、破産の申し立て~免責許可の決定までの間、一部の資格や職業に制限がかかります。
例えば、次のような資格や職業については制限がかかり、その仕事をできないかもしれないのです。
【自己破産で制限がある主な資格・職業】
①士業
・弁護士
・司法書士
・行政書士
・公認会計士
・税理士
②お金に関係する一部の職業
・警備業者の責任者、および警備員
・貸金業務取扱主任者
・質屋
・生命保険募集員
・調教師や騎手
・建設業者
③公務員の委員長
④団体企業の役員
⑤会社の執行役員や取締役
上記の職業は一部なので他にもありますが、一般的な仕事であれば基本的に影響はありません。
ただし、制限を受けるとなると職場にバレる可能性が高いですし、免責許可決定まで資格の必要ない別の業務に従事するなどの対応も必要になります。
該当する職業の方はどこまで制限を受けるのか確認しておきましょう。
自己破産をすると官報に掲載される
自己破産をすると官報に氏名や住所などが掲載されます。
官報とは国が発行している機関紙で、インターネットから直近30日分を無料で閲覧することも可能です。
無料で閲覧できる期限は限定的であり、一般の人が官報によって知人の破産を知ることはほぼないと思って大丈夫でしょう。
自己破産の事実が官報に載るからといって、近所や会社の人にそのことがバレるわけではありません。
ただし、自己破産を知った違法業者(ヤミ金)からダイレクトメールが届くケースはあるようです。
あまり大きなデメリットではありませんが、念のため、覚えておきましょう。
同居している家族がいるとバレる可能性が高い
自己破産をしても、基本的に会社などにはバレませんが、家族に内緒で手続きするのは難しいでしょう。
自己破産が申立人の家族へ直接的に影響することはありませんが、同居していれば共有財産もありますし、手続きのためには世帯単位で家計の状況が分かる書類も必要になります。
自己破産で配偶者や子どもの所有する財産が没収されることはなくても、秘密にしたまま手続きすることはできません。
自己破産のためには家族からの協力も必要なので、しっかりと話し合った上で手続きに入るようにしてください。
自己破産できる条件
自己破産をすると借金の返済義務が免除されますが、誰でも手続きできるわけではありません。
自己破産をするためには「支払不能」の状態である必要があり、支払不能については破産法で次のように定義されています。
この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。
(※破産法 第2条 第11項)
一方で、自己破産ができる具体的な金額の基準というものはありません。
「100万円以下だと自己破産できない」というようなこともなく、すでに支払いに遅れが生じしていて、その金額を支払うことができないなら自己破産できます。
反対に、たとえ1,000万円を超えるような負債でも、返済を継続できるだけの収入や返済に充てられる財産を持っているなら自己破産することはできません。
また、前述の通り、申し立てをしても免責されない場合もあるので注意が必要です。
自己破産しても免責されないケース
自己破産によって借金の返済義務を免除してもらうには、裁判所で免責許可決定を受ける必要があります。
ただし、免責不許可事由に該当する場合には、申し立てをしても免責許可を得られないかもしれません。
次のような行為が申し立ての前後にあると、免責されない可能性があるのです。
【免責不許可事由】
・浪費
・ギャンブル
・財産隠し
・ヤミ金からの借り入れ
・クレジットカードの現金化
・特定の債権者を優遇した返済(偏頗弁済)
・虚偽の書類の提出
・裁判所や破産管財人の調査への協力拒否
など
これらについては破産法第252条(免責許可の決定の要件等)で規定されています。
上記はかなり簡略化して表記したものなので、「ギャンブルによる借金があると絶対に免責されない」というわけではありません。
例えば、自己破産すると決めていながら借り入れを増やしたり、ギャンブルや高額なショッピングを繰り返したりすると悪質だと判断され免責されない可能性が高いですが、意図的ではないものなどは免責不許可事由にならないこともあります。
裁判所に認められている裁量免責
また、実際の裁判では裁量免責が認められており、担当する裁判官の判断によって免責不許可事由に該当するケースでも免責とできるのです。
(前略)裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
(※破産法 第252条 第2項)
もちろん、裁判所や破産管財人の行う調査に対して協力を拒んだり、没収されたくないと思って意図的に資産を隠したりすると裁量免責はないでしょう。
ただし、ギャンブルや浪費が原因の借金でも、しっかりと事情を説明すれば免責される可能性もあるのです。
免責許可が得られるのかは弁護士の腕にもよるため、ギャンブルや浪費といった免責不許可事由があるなら、借金問題に強い法律事務所を探すことも重要になります。
免責不許可事由の中には偏頗弁済のように知っていないとうっかり行なってしまいそうなものもあるので、専門家の指示に従って手続きを進めましょう。
自己破産すべきではないケース
先ほどもいいましたが、自己破産は借金を返せないときの最終手段です。
返済の義務はなくなるものの、説明してきたようなデメリットがあるので慎重に検討しましょう。
また、次のような場合には、自己破産以外の選択肢も検討すべきです。
【自己破産すべきではないケース】
・減額できれば返済の見込みがある場合
・住宅など没収されたくない財産がある場合
・職業や資格で制限を受ける場合
・多額の過払い金が発生している場合
・借入残高の多くがヤミ金からの借金である場合
個人再生や任意整理といった債務整理の方法もあるので、自己破産一択で考えるのではなく、自身の状況に合った方法を選ぶことが重要になります。
自己破産の種類
自己破産は、大きくは次の2種類に分類できます。
【自己破産の種類】
・同時廃止
・管財事件
通常、自己破産では裁判所に対して与納金を納めるのですが、その費用の捻出もできないようなケースでは「同時廃止」になります。
自己破産の多くは同時廃止で、管財事件と比べて手続きが早く、費用もあまりかかりません。
ただし、実際にどちらになるかは裁判所が判断をします。
例えば、同時廃止だと思って申し立てを行なっても、管財事件として扱われる場合もあるのです。
同時廃止
通常であれば自己破産では財産の調査を行う破産管財人が選任されます。
しかし、分配できるような資産を持っていないと明らかなケースで破産管財人は選任されず、破産手続きの開始と同時に手続きが終了する「同時廃止」になるのです。
法律では同時廃止になる条件を次のように規定しています。
裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
(※破産法 第216条 第1項)
自己破産で裁判所へ納める与納金のほとんどは破産管財人への報酬なので、同時廃止だと管財事件よりもかかる費用が少なくなります。
破産財団は破産者の所有する資産と考えると分かりやすいでしょう。
自己破産はそもそも支払不能の状態に陥っている方のための制度なので、十分なお金を持っていない場合には少ない費用で手続きできるようになっているのです。
管財事件
管財事件は債権者に分配できるだけの財産を持っている場合、もしくは、持っている可能性がある場合の手続きです。
管財事件として扱われるかは裁判所が決定するため、同時廃止を申し立てても、裁判所が調査の必要があると判断したなら破産管財人は選任されます。
そして、調査を行なった結果、債権者に分配できるような財産がないと確認できた場合には、その時点で手続きが終了します。(これを「異時廃止」といいます。)
一方、分配できる財産があるなら、それらは没収され現金に換えられます。
現金や預貯金以外はそのままだと債権者に分配できないため、このような換価処分が行われるのです。
破産管財人は管財人名簿に登録されている人の中から選任されますが、基本的には弁護士だと思って問題ありません。
自己破産の手続きが公正・公平に進むように、破産管財人が手続きを管理するのです。
また、裁判所によっては「少額管財」と呼ばれる運用も行なっています。
少額管財では裁判所に納める与納金が通常よりも少額で済み、より自己破産を利用しやすくすることが目的です。
管轄の裁判所によっても異なりますが、少額管財になるには「弁護士が代理人となっていること」などの条件があります。
弁護士が財産の調査などをある程度まで終わらせているからこそ、その後の手続きがスムーズに進みます。
結果として破産管財人への負担も減るので、与納金を少額にできるのです。
自己破産の手続きにかかる費用はいくら?
自己破産にかかる費用は「法律事務所に手続きを依頼するかどうか」、「同時廃止、管財事件(少額管財含む)のどちらになるか」などによって大きく変わります。
例えば、弁護士などの専門家に依頼をせず自分で申し立てを行い、同時廃止で手続きが進む場合にかかる費用は裁判所に納める数万円だけで済みます。
ただ、自己破産の手続きも簡単ではありませんし、管財事件になる場合もあるでしょう。
まず、弁護士費用に関しては20万円~40万円ほどが相場です。
同時廃止なら20万程度で済みますが、管財事件になると40万円程度はかかります。
次に、裁判所に納める必要は、数万円~20万円ほどです。
裁判所によってもかかる費用は違いますが、通常の管財事件や少額管財では破産管財人への報酬も含まれるため高額になります。
自己破産をする場合には、これらの弁護士費用と裁判所に納める費用をセットで考えてください。
次章では自己破産を弁護士に依頼するメリットについて解説しますが、弁護士に依頼をするという前提であれば20万円~50万円程度はかかるでしょう。
自己破産を弁護士に依頼するメリット
自己破産を弁護士に依頼する場合の費用は決して安くはありません。
ただ、自己破産を弁護士に依頼するのには、次のようなメリットがあります。
【自己破産を弁護士に依頼するメリット】
・破産者本人の負担が少ない
・督促を止めることができる
・免責許可を得やすい
・少額管財の適用条件を満たす
破産者本人の負担が少ない
もっとも大きなメリットは、自己破産を申し立てる負担が圧倒的に少なくなることです。
自己破産をするには様々な書類を用意して、裁判所へも何度か出向かないといけません。
裁判所へ行けば手続きに関する情報を得られますが、それでも法律に関する知識のない一般人がスムーズに手続きするのは難しいでしょう。
とくに仕事をしながら自己破産の準備を進めなければいけないとなると、時間もかなり限られます。
そのため、自己破産を自分で手続きするのには、相応の覚悟と労力がいるのです。
督促をすぐに止めることができる
自己破産を弁護士に依頼すると、金融機関に受任通知という書類が発送されます。
これは弁護士が債務整理の手続きに介入したことを示す書類で、受任通知を受け取った金融機関は債務者に直接督促することができません。
そのため、弁護士に依頼をした時点で督促が止まるのです。
一方、自分で手続きをする場合、裁判所に申し立てをしてそれが受理された後に督促が止まります。
実際には、受け取った受理票を自身で金融機関へ送り督促を止めることになります。
弁護士に依頼する場合と比べて、督促が止まるのは遅いので注意してください。
免責許可を得やすい
免責不許可事由に該当する場合、弁護士に依頼した方が免責を得やすいでしょう。
例えば、ギャンブルや浪費が原因で借金を作ってしまったなら、自分一人で手続きを進めるのではなく、弁護士に依頼することをおすすめします。
自己破産は申し立てをしても免責されない可能性があります。
弁護士に依頼をすれば確実に免責許可を得られるわけではないものの、不安な人は専門家に任せた方が確実です。
少額管財の適用条件を満たせる
裁判所によって運用は異なりますが、少額管財のような制度があるなら弁護士に依頼をすると自己破産にかかる費用を抑えやすいです。
同時廃止になる場合、裁判所へ納める費用は少額ですが、管財事件になってしまうとかなりの費用がかかります。
そのため、自分で手続きをして管財事件になるのであれば、弁護士に依頼をして少額管財として扱われた方が費用を抑えられるでしょう。
実際の金額は裁判所や法律事務所によっても異なるため一概にはいえませんが、弁護士費用がかかっても少額管財を選択するだけの価値はあるのです。
自己破産の流れと破産手続きに要する期間
自己破産は任意整理と比べると手続き完了までに時間がかかり、とくに「管財事件」として扱われる場合には債権者集会などもありそれなりの期間を要します。
一方、同時廃止であれば破産手続開始決定と同時に手続きが終了となるため、スピーディに自己破産が完了するでしょう。
自己破産をするにはどのくらいの期間を要するのか、および、どのような流れで手続きが進むのかをまとめました。
自己破産の手続きにかかる期間
同時廃止であれば、破産手続きの申し立てから手続き完了までは3ヶ月~4ヶ月程度が目安です。
申し立て前の法律事務所での相談や準備の期間を含めても、半年程度で終了するでしょう。
しかし、管財事件として扱われる場合には、申し立てから手続き完了までだけでも半年以上はかかります。
少額管財なら比較的スピーディに進むでしょうが、通常の管財事件で手続きが長引いてしまうと1年くらいかかることもあるようです。
どのくらいの資産を持っているかによって財産を調査したり、それらを換価処分したりするのにかかる時間は変わってきます。
自己破産の手続き全般で考えれば、半年~1年程度かかると思っておくと良いでしょう。
自己破産の相談~免責許可の決定までの流れ
一般的な自己破産の流れについて説明していきます。
個別の事情や管轄の裁判所によっても差はありますが、おおむね次のような流れで自己破産は進みます。
【自己破産の相談~免責許可の決定までの流れ】
①法律事務所での相談
②自己破産を正式に依頼する
③受任通知の送付
④法定利息にもとづき引き直し計算
⑤自己破産の申し立てに必要な書類の準備
⑥裁判所で破産手続きの申し立て
⑦破産手続きの開始決定
⑧免責審尋
⑨免責許可/ 不許可の決定
これは自己破産が同時廃止で進む場合の流れです。
自己破産の多くは同時廃止になっているので、まずはこの流れを確認しておくと良いでしょう。
①法律事務所での相談
最初に債務整理を扱っている法律事務所で相談します。
電話やインターネットで相談できる法律事務所も多いので、まずはそれらの方法でコンタクトを取ることをおすすめします。
借金と家計の状況を見ながら、本当に自己破産すべきなのか、別の債務整理で解決できないのかアドバイスを貰いましょう。
実際に依頼する場合のスケジュールや料金についても確認しておくと、この後の流れがスムーズです。
②自己破産を正式に依頼する
相談した内容をもとに自己破産を弁護士に任せる場合には、正式な依頼をします。
無料相談を受け付けている事務所であれば、正式な依頼をした後から規定の料金がかかることになります。
③受任通知の送付
弁護士が自己破産の依頼を受けると、債権者になっている金融機関へ受任通知を送ります。
この記事でも説明しましたが、この受任通知によって金融機関からの督促は止まるでしょう。
④法定利息にもとづき引き直し計算
金融機関から取引履歴を開示してもらい、法定利息にもとづき利息を計算し直します。
これを引き直し計算といい、過払い金があれば返還請求も行ってもらえます。
⑤自己破産の申し立てに必要な書類の準備
破産手続きの申し立てに必要な書類を準備します。
担当者から指示があるので、その指示に従って必要な書類を集めてください。
同居している家族がいる場合、配偶者などの収入証明書なども必要です。
そのため、事前に家族と相談をした上で自己破産の手続きに入った方が、スムーズに準備が進むでしょう。
⑥裁判所での破産手続申立
必要な書類を用意したら、裁判所で破産手続きを申し立てます。
自己破産は住所を管轄する地方裁判所で行われます。
申し立ては弁護士が行ってくれるため、基本的にこのタイミングでは、裁判所へ一緒に行く必要はありません。
⑦破産手続きの開始決定
申し立てをした後、破産手続きの開始が決定されます。
このときに、同時廃止の決定、免責審尋の日程も決まり、通知されます。
⑧免責審尋
免責審尋とは破産者を免責すべきかを決める面接のようなものです。
裁判所によっても違いますが、免責審尋では本人も裁判所へ行く必要があります。
ただ、時間はそれほどかからず、中には集団で免責審尋を行う裁判所もあるので、依頼している法律事務所の担当者に確認しておきましょう。
⑨免責許可/ 不許可の決定
免責審尋の後、免責の許可、もしくは不許可が決定され、その結果が通知されます。
そこから1ヶ月後に免責許可決定が正式に確定となります。
免責の許可は官報にも掲載され、指定された期間内に債権者からの不服の申し立て(即時抗告)がなければ免責許可の確定です。
ただ、裁判所が免責許可決定をした後に、即時抗告があるケースは稀なので心配はいりません。
自己破産が管財事件になった場合
自己破産が管財事件になると、免責審尋の前に破産管財人との面接、債権者集会が実施されます。
破産管財人との面接は基本的に弁護士も同席し、およそ30分で終了します。
面接は破産管財人の事務所で行われる場合が多く、事前に代理人弁護士から管財人へ情報共有されます。
そのため、基本的な事実の確認がメインなので、聞かれたことに正直に答えるだけで大丈夫です。
また、債権者集会は裁判所で行われ、当日は本人の出席も必要です。
ただ、個人の自己破産では債権者が出席しないというケースも多く、大きな問題がなければ10分以内に終わるでしょう。
その後は同時廃止と同様に免責審尋へ進みます。
自己破産するとどうなる?自己破産前後の生活に関するよくある疑問
この記事でも説明したように、自己破産はそれなりにデメリットもあります。
ただ、インターネットで見かける噂や、何となく持っている自己破産のイメージの中には間違っているものも多いのです。
ここでは自己破産前後の生活に関するよくある疑問について簡潔に回答していきます。
自己破産に回数制限はありません。
制度の上では2回、3回とできます。
ただし、前回の自己破産から7年が経過していない場合には、免責不許可事由に該当するためすぐの手続きはできません。
加えて、前回と同じ理由では、反省していないと見なされやすく免責は難しくなるでしょう。
自己破産をすれば本当に借金の返済義務がなくなります。
ただし、非免責債権に関しては、免責されても返済、支払いの義務が残るので注意が必要です。
【主な非免責債権】
・税金
・国民健康保険料
・国民年金保険料
・損害賠償の請求
・従業員への未払い給与
・養育費
・各種罰金
などなど
このようなものに関しては、自己破産で免責が認められても支払わないといけません。
自己破産をしても海外旅行はできます。
パスポートへの影響はまったくありませんし、海外へも自由に行けます。
ただ、破産手続きの申し立て~免責許可決定までの間に関しては注意が必要です。
一定期間以上、居住地を離れる場合には裁判所からの許可が必要です。
同時廃止であれば、破産手続き開始と終了が同時なのでほぼ影響はありませんが、管財事件だと免責許可決定までの間は制限があると思いましょう。
また、破産を申し立てる前や短期間の海外旅行でも、依頼をしている弁護士には相談してください。
引越しも海外旅行と考え方は同じです。
自己破産をしても自由に引っ越せますが、申し立て~免責許可決定までは自身の居場所を明らかにしておく必要があります。
そのため、引越しが必要なときは住所変更を裁判所に届けなくてはいけません。
管財事件だと基本的には弁護士に依頼しているケースが多いので、弁護士に相談をした上で手続きを進めると良いでしょう。
自己破産をしても引越しは自由に行えますが、アパートやマンションなどの賃貸契約を結べないケースも0ではありません。
ただし、自己破産が原因で賃貸契約を結べないことは少ないので、あまり心配する必要はないでしょう。
賃貸契約を結ぶときには入居審査が実施されます。
信用情報機関に加盟している保証会社が審査をする場合には、自己破産が原因で入居を認めないということもあるのです。
信用情報機関に加盟していない賃貸保証会社もありますし、そもそも保証会社を利用しないなら信用情報を見られることもありません。
そのため、自己破産が原因で入居審査に落ちるケースは少ないと思ってください。
自己破産の間違ったイメージの1つですが、破産しても選挙権はなくなりません。
選挙権が制限されることは一切ないので安心してください。
ちなみに、被選挙権への影響もないです。
引越しや海外旅行、職業・資格とは違い、一時的にも制限はかかりません。
過去に自己破産していることを知る主な方法は信用情報の閲覧ですが、自身の情報を除いては信用情報を個人が閲覧することはできません。
そのため、結婚相手に自己破産が知られることは基本的にないでしょう。
ただ、自己破産をしていると、しばらくの間はローンを組んだり、保証人になったりはできないため、そのようなことから「信用情報がブラックなのでは?」と疑われることはあるかもしれません。
信用情報を閲覧できないのは、個人だけでなく企業も一緒です。
信用情報機関に加盟している企業などはローンやクレジットカードの申し込みがあれば、申込者から同意を得た上で信用情報を確認します。
たとえ金融機関などでも採用活動のために信用情報を利用することは認められていません。
自己破産の事実が面接を受ける企業に知られることはなく、就職や転職で不利になることはないでしょう。
弁護士に自己破産の手続きを依頼するメリットは大きいですが、やはり費用は気になりますよね。
中には弁護士に依頼したいものの、費用が払えずに躊躇している人もいるのではないでしょうか?
実は、法律事務所によっては分割払いで対応してくれます。
そのため、一度に全額を支払えなくても弁護士に依頼することはできるので、まずは費用の支払いについて相談してみてください。
自己破産をしても携帯電話の契約は可能ですが、注意したいのは端末代金です。
端末代金を分割で支払うためには、信用情報を利用した審査があります。
自己破産の記録が信用情報に載っている間は、端末代金を分割払いすることはできないので、持っている端末を利用する、もしくは一括で購入しないといけません。
携帯電話の契約自体はできますが、端末代金の支払いには注意が必要です。
この記事でも何度かふれましたが、自己破産は自分で申し立てをすることも可能です。
自分で手続きするなら弁護士への報酬が不要なので、自己破産にかかる費用をかなり抑えられます。
ただ、弁護士に自己破産を依頼するメリットはたくさんあります。
自己破産の相談を無料で受け付けている事務所も多いため、まずは無料相談だけでも利用すると良いでしょう。
自己破産の手続きが開始された後に得た財産は「新得財産」といわれ、自己破産をしても没収されることはありません。
そのため、自己破産後であれば貯金をすることも自由です。
また、自己破産をしても銀行口座の新規開設は行えます。
「ローンを組めないなら、銀行口座も作れないのかな?」と思うかもしれませんが、そのような心配はいらないのです。
【まとめ】自己破産にはメリットだけでなくデメリットも!自分に合った債務整理の方法は弁護士に相談しよう
自己破産によって免責許可を得られれば、非免責債権を除いてすべての借金の返済義務がなくなります。
任意整理や個人再生といった方法では借金が減額されても、支払いの義務は残るので、自己破産は借金の返済に困った場合の最終手段だといえます。
この記事で紹介したように自己破産にはデメリットも多いです。
そのため、自己破産しかできないと思い込むのではなく、任意整理や個人再生など別の債務整理で解決できないかも検討すべきでしょう。
債務整理に関しては無料相談を実施している法律事務所もたくさんあります。
借金を放置していると状況はどんどん悪化していき、いつの間にか自己破産でしか解決できなくなるかもしれません。
無料相談だけなら料金はかからないので弁護士などの専門家からアドバイスを受けて、早めに債務整理を検討するようにしてください。
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